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山梨県で生活する喜び

県外者が描く山梨県のイメージとは。桃や葡萄など果樹栽培、世界的にも評価が上がっているワイン、外国人観光客に人気のある富士山麓・富士五湖観光などを思い浮かべる方が多いかもしれません。観光では味わえない、住んでいるからこそ享受できる山梨県の魅力について、山梨県の個性と言う観点で、その代表的な取組みにフォーカスします。山梨県に生まれ育った方々には、当たり前のことが県外の方から見れば、素晴らしい環境だと言うことをもう一度見直していただければ幸いです。声を大にして自慢するのではなく、さりげない日常として常に生活の中にある山梨県ならではの個性に迫りたいと思います。

産地でなければ味わえない!!

代表取締役社長志村 晃生氏

富士の輝

山梨県は、誰もが葡萄の一大産地としてのイメージを持っています。近年、シャインマスカット出現後、新品種の開発が活発になり、生食用葡萄品種は、すごい勢いで増えています。令和5年の都道府県別生産量ランキングを見ると、1位山梨県(全国の25%)、2位長野県(同19%)、3位岡山県(同10%)で、山梨県は依然として生産量は全国第一位ですが、ここ数年の気候変動は、ブドウ栽培に適していると言われてきた山梨県の気候風土に大きな影響を及ぼし始めています。現実に2024年の猛暑や長雨及び日照不足による影響は、ブドウが色づかないという現象も引き起こしましたし、また、従前はあまり栽培に適していなかった北杜市にも葡萄畑が増えてきていて、葡萄は勝沼という固定概念も崩れつつあります。

葡萄栽培に適した環境は、1.適度な降水量 2.寒暖差 3.日照時間 4.土壌の排水性と保水性 5.風通しのよさと言われ、勝沼地域はそれらを全て満たしていたことから、一大産地になったと言われています。ブドウ栽培事業者は、今、危機感を持っており、近いうちに長野県に生産量で追い抜かれる日も来るのでなないかと危惧しています。

そのような状況下、付加価値の高い葡萄品種を自社開発し、山梨県の葡萄のブランド価値を上げる取り組みをしているのが、志村葡萄研究所です。現社長の志村さんのお父様が、大手ワインメーカーを退職後、自らブドウ栽培を始めたのが当研究所の始まりです。品種改良は早くても結果が出るまでおおよそ4年の歳月を要します。全くものにならない場合も多く、非常にリスクが高い事業です。その取り組みから生まれたのが、“富士の輝”です。ブラックシャインとも言われ、サインシャインレッド、シャインマスカットと合わせ、シャイン3種詰め合わせは、ブドウの贈答品としては、最も付加価値の高い商品です。高リスク覚悟で、民間ビジネスとして取り組んできた当研究所はリスペクトしてもし切れないくらいすごいことですが、山梨県を彩る強烈な個性とも言える葡萄栽培は、もっと県を挙げて取り組んでも良いのではないかと率直に思います。民間事業者と県行政のより深い連携とブランディングが、山梨県にとって価値ある葡萄産業の持続に欠かせない取り組みだと考えます。

現社長は、全く異業種で販売の仕事に就いていましたが、お父様を継いで新たなビジネス展開に取り組んでいます。全国放送番組に取り上げられたこともあり、当研究所内にある「dolce & caffe Grape Shop cocolo」では、旬のフルーツを使ったパフェなどを提供していますが、95%が県外のお客様だそうです。時間と交通費をかけても、ここに来なければ食べられない、手に入れられない葡萄を買えるお店が山梨にあることって素晴らしいことだと思いませんか。当店では、東京でも葡萄の直売なども行っており、常に完売だそうです。県外者からは垂涎の葡萄を県民は日帰りで堪能することができる幸せをぜひ体感して欲しいと思います。山梨県に生まれ育った方は、桃と葡萄は貰って食べるものという慣習が染みついているように見えますが、それはそれで山梨県の特徴で、素晴らしい地域性とも言えますが、良い商品やサービスは、健全な消費者がいてこそ持続できることも、市場が縮小する地方は考えることも大事ではないでしょうか。

富士の輝を使ったパフェ「極」

  • 春を彩るいちごシリーズ

【企業PROFILE】

株式会社 志村葡萄研究所/
dolce & caffe Grape Shop cocolo
山梨県笛吹市御坂町下黒駒520-1