大正15年(1926年)創業の三工社。その社名は「機械工学」・「電気工学」・「化学工学」の3つのテクノロジーに由来しています。進歩し続ける科学技術の成果を常に導入し、「品質の確保・納期の厳守・価格の低廉」を社是として、創業以来、人に優しい社会を支えるためのものづくり企業として邁進してきました。東京本社、甲府事業所、甲府事業所テクノセンターの連携により、開発から生産までの一貫体制を実現し、優れた技術力のもと創意あるものづくりで未来を切り拓いています。
「当社は、鉄道省の指定工場として鉄道信号保安装置の製造と設置工事を行う企業として大正15年に創業し、1964年の東京オリンピック開催に伴い高速道路整備が進められる中で高速道路標識などの分野にも進出していきました。現在は鉄道信号保安装置を主力商品として、鉄道車両用部品、道路交通信号機、道路標識などを製造しています。またニーズに応えガス検知警報装置・計測装置等の分野にも貢献しています。年間売上は約60億円で、そのうち95%以上をメインである鉄道信号関係が占めています」と、この日お話を聞かせてくださったのは、三工社執行役員・甲府事業所長の長田真一さんです。「当社は東京で創業し、現在、本社は東京渋谷の幡ヶ谷に置いています。しかし敷地が手狭になってきたことから、工場部門として平成2年に甲府市南部工業団地に敷地面積約13,000㎡の甲府事業所を設けました。さらに平成22年には中央市が頭脳産業の集積拠点として整備した山梨ビジネスパーク内において、列車の安全運行のための自動列車停止装置(ATS)のセンサーの役割を果たす『ATS地上子』を専門に製造するテクノセンターの操業を開始しました」。テクノセンター内には製品展示室もあり、展示されている大型のジオラマが三工社の製品の魅力を伝えています。「山梨に製造拠点を設けたことにより、県内の若い世代の雇用が進み社員の年齢層がずいぶん若返りました。また豊かな自然環境の中で社員の親睦を深めるイベントなども開催し、明るい雰囲気の職場環境を作ることができていると感じています」と、人を育て、技を極めていく甲府事業所が創り出す未来に長田さんも期待感を高めています。
「少子高齢化、人口減少などに伴い鉄道を利用する人は減っていくでしょう。そうなると鉄道事業者も省力化に舵を切ってくることが予想されます。その時に私どもが省力化に寄与できる製品を開発し提供していくことが、ひいては社会全体に貢献することにつながると考えています。そのためにAI、IoT、ITなどに対応できる技術者の採用も重要視しています。また製造拠点である山梨では製造業務を担える人材のさらなる育成も進めていく必要があります。当社は現在も機械加工が主流としてあり、また電気電子の技術も必要とする複雑で難しい業態であると言えるかもしれません」。このように社員の専門知識や技術の向上が時代のニーズを先取りする製品を創る上で不可欠である三工社では、すでに20年以上継続している通信教育の受講をはじめとする社内教育制度やポリテクセンターのセミナー受講など、社員のスキルアップを図る機会を多く設けています。「たとえば機械系で入社した社員も10年後には電気系の仕事もできるように育っています。社員一人ひとりがお客様の多様な要望にお応えできる技術者として活躍している、それが当社の強みであり特徴といえるでしょう」。
三工社の主軸である鉄道関連製品は、北海道から九州まで日本全域で使われています。「たとえば雪が多い地域や気温が低い所で使用する信号機のガラス面にはヒーターを入れ、雪が降っても信号がしっかり見えるようにするなど、地域の特性に合った製品を製造しています。踏切にある非常ボタンと書かれた『踏切支障報知装置操作器』はみなさんも見たことがあると思いますが、実はこれも当社の製品です。他にも通常みなさんは日常的に目にすることはできない多種多様な当社の製品が陸上運送の最大機関である鉄道の安全確保に貢献しています。時代のニーズを先取りする製品を生み出し続けている一方で、線路のポイントで使用される昔ながらの『転てつ機』など、当社でしか作っていない製品も鉄道業界で必要とされています」。先端を追う部分と歴史ある製品を継続して供給するという両方を守ることが三工社の使命だと長田さんは言います。「鉄道は過去には悲惨な事故もありました。ですが近年はそのような事故もなく、安全かつ安定的に運行ができています。私どもの製品が社会インフラの安全に寄与していると実感でき、とてもやりがいを感じています」と笑顔で話してくれました。どこにでもあるわけではない、特別な役割を果たし社会に貢献する企業がここにあります。