人材難と
デジタルトランス
フォーメーション
益々不透明感を増す国際社会、不穏な時代を前に日本の産業界はどう舵を切るのか。確実なことは、益々人材が減少していく目の前の現実だけであり、このまま、対策に取り組まなければ、日本の産業界は衰退の一途をたどることになりかねません。激しい時代の変化に対応するため、また、不足する人材への対策として進化するデジタルインフラを十二分に活用することで、業務プロセスを変革する、自動化により省人化・無人化を目指すなど、トランスフォーメーション(変身、化身)は避けては通れない課題です。今号は、事業を次世代に継続するために、様々な変革に挑戦する企業の営みに迫ります。
東京・多摩市に本社を構える「ケル株式会社」は山梨県内に2つの事業所を持つ電子部品メーカーです。電子部品の中でもコネクタ(接続部品)をメインに開発製造を行い、日本全国、そして海外のクライアントに製品を届けています。南アルプス事業所で部品加工を行い、その後、山梨(市川三郷)・長野(安曇野)事業所の自社生産ラインで組立を行っています。
「創業は1962年、今年で64年目を迎えます。山梨に来たのは1982年。東京・青梅市にあった工場を拡大するときだったと聞いています。山梨だった理由は青梅との距離(アクセス)、そしてちょうど中央道が全面開通するタイミングであり、物流を考えた利便性にメリットがあったのではないかと思います」と推察しながら話してくれるのは、人事部部長・武曽大輔さん。「10年に1度工場を追加したいというのが先々代の思いでもありました。一つ目の工場が東京・青梅、それから約10年後、この山梨に工場を新設することとなりました。コネクタの同業が山梨・長野のエリアに少なかったこともあり、山梨の次は長野と拡大しているものと考えます」と代永秀延取締役が続けます。
同社が手掛けるコネクタは、普段私たちが家電量販店などで購入するUSBやHDMIではなく、カーナビやETC、一眼レフや監視カメラ、または大型の制御装置など、メーカーが製造・使用する電子機器に搭載されるもの。B to Bの製品が主であり、中でもプリント基板同士をつなぐコネクタの製造を得意としているそうです。
「ケルの強みとしては、お客様から『品質が良い』というお声をよくいただいています。私たちの認識としては、それほど大きな規模の会社ではないことを活かして、標準のものをつくって販売するにせよ、お客様の意見を取り込んだ特徴のあるものをつくることができること。お客様ごとに開発製造・販売するというのも多くやっており、小回りがきく点ではないかと考えています」(代永取締役)
「私たちは消費者の皆さんが普段目にすることのない部分に使用される部品をつくっています。説明がしにくいことに加え、説明を受ける学生側もイメージがつきにくいため、採用にはなかなか苦労します」と武曽人事部長。県内の高校をメインに採用活動を続けている同社では、近年、山梨工場では近隣の学校や自治体との関係を強化。学校からのインターンシップの受け入れも開始しました。
「インターンシップでは、極力実際に手を動かしていただきます。実際の製造現場に入り、組立のラインに入って作業をしてもらう。入社後はマナーなどの導入研修を経て、その後はOJTが中心。専用機が多いため、スキルをつけるのはどうしても現場。入社後になるんです」と南アルプス加工部部長の青木源英さんが教えてくれます。
人が覚えるべきところと、標準書(マニュアル)が用意できる部分の2つがあり、専用機を扱う作業はどうしても標準書に残すことができないことが多く、先輩が後輩に指導をしながら技能を伝承していく。それに加え、ポリテクセンターのセミナーを利用しているそうです。
「セミナーは能力開発における問題解決の手段として使わせていただいています。今は現場のニーズとして加工技術とPLCを受講。どちらも生産過程に必須の技術です。セミナー受講後に社内報告をしてもらうことで受講生たちの理解度チェックを行っています」(青木さん)
新人教育の一環としての意味が大きく、入社後半年くらいのタイミングでポリテクセンターのセミナーを活用している同社。
「私たちはメーカーですから、日々進歩する技術にキャッチアップしていく必要があります。先輩から受け継ぐ技術もありつつ、世の中が求める技術を対外的なところから学んでいくことも重要。広く、世の中のニーズに目を向けて、社内とは違う視点で気づきを得られるという点でポリテクセンターのような外部セミナーは大事ですね。少子高齢化社会で人材確保が厳しくなっていくのであれば、活躍する人材を自社で育てていく必要がある。ですから就職後の専門教育という点でも期待できると考えています。重要なのは、目指す方向に合わせた教育システムを組み立て、提供していくことですね」(武曽さん)
4月からの中期経営計画には、海外シェア拡大が一つの重要なポイントとなっている同社。技術者を育てていくことと並行して、グローバルに活躍できる人材の発掘も行っていきたいと聞かせてくれます。