今号では、生産性を向上・改善するために、手段の一つとして社員教育に積極的に取り組む企業を紹介いたしました。
具体的なアクションの一つとして、自動化や省力化を推進することは、生産性の向上・改善の選択肢として有効なことは明白です。ただ、自社内だけで解決できる課題ではなく、機械や設備を供給できるベンダー企業、IoTシステムソフトウェア制作事業者、システム全体を構築提案できるシステムインテグレータの存在、そして自社内で自動化の推進と生産性向上を企画できる人材など、多くの要素が必要となります。一部ではありますが、そういった事業者をここでは紹介します。社員教育の先にあるものは何か、労働生産性指標の改善か、TFPなどの財務指数の向上か、生産性の向上・改善はどこまでも具体性が重要です。具体化のための方策を考えます。
ファクトリーサイエンティストという存在をご存じですか。IoTの仕組みを導入する、自動化システムを構築するなどデジタル技術による事業プロセスの変更を、ベンダーに全面的に依存して実施すると失敗をするケースが多いのが現状です。自社内にベンダーと一緒に自動化・省力化を進めるデジタル人材は今後益々必要です。その役割を担えるのがファクトリーサイエンティストです。その育成事業に取り組むファクトリーサイエンティスト協会を紹介します。
代表取締役濱中 直樹 さん
(合同会社ハマナカデザインスタジオ 代表社員)
日本国内の企業の99.7%が中小企業です。特に、製造業においては、日本の高度成長を支えた町工場と言われる小規模事業所が大半です。日本の製造業を支えてきたのは、モノづくりの職人と言われる方々の経験、カンコツに依存した現場力であったことは紛れもない事実です。ただ、時代は大きく変わりました。デジタルテクノロジーの進化は、モノづくりを根底から変えようとしています。若年層の製造業離れも顕著である昨今、職人技からサイエンティストへの変化が、時代が求める製造業界の姿ではないでしょうか。日本の産業競争力の低下に危機感を持ち、由紀ホールディングスの大坪正人さんが中心になって民間事業者、学識者などの方々で設立されたのが、ファクトリーサイエンティスト協会です。この協会の設立趣旨、沿革、活動内容、そして目標について、2024年から事務局長を務める濱中直樹さんにお話をお聞きしました。


2020年に設立されたファクトリーサイエンティスト協会は、データマネジメント力(現状共有・合意形成・戦略立案・プランニング・コミュニケーション・チームビルディング)・データサイエンス力(データを分析する・データから意味を抽出する・データから知識をつくる)・データエンジニアリング力(データを集める/装置製作・データを加工する・データを整理する)の3つの能力を総合的に備えたファクトリーサイエンティストの育成と資格認定を主たる事業として活動しています。自社内にデジタル人材がいることで、省力化・自動化を進める中心的な人材になり得ること、また、セクショナリズムを超えて横断的なコミュニケーションの活性化ができることなど、ファクトリーサイエンティストとして、激しい変化を楽しめるようなリーダーになって欲しいという願いもあります。属人的に個人に帰属していた暗黙知スキルを開放し、データを基にした形式知スキルにすることで、次世代人材が育ちやすい環境を作ることも、ファクトリーサイエンティストの大きな役割です。

教育事業において、これまでのファクトリーサイエンティスト育成講座やオンデマンド版講座(オンライン)に加え、、リアル出張講座などにも取り組んでいきたいと濱中さん。ファクトリーサイエンティスト認定者の更なるスキルの向上を目指して、オプショナル講座として「FS工作機械活用講座」「製造業向けAI(特にフィジカルAI)活用講座」「FS産業用ロボット技術者育成講座」なども、積極的に取り組んでいきたいともお話しいただきました。ちなみに、山梨県のファクトリーサイエンティスト認定者数は、関東・東海地方で最少です。自社内に自動化・省力化を推進できるリーダーが不在であることは、大きな弱点だと言えます。今後、人材が益々不足する山梨県、データに基づく製造業に舵を切る時期が来ていることを感じて欲しいと思います。
2030年までに4万人のファクトリーサイエンティスト認定を目標に、日本の製造業の体質も変えていきたいと濱中さん。これまで日本の製造業を牽引してきた職人技には敬意を払いますが、日本の製造業の国際競争力の復活には、職人技から科学へのシフトが鍵を握ります。


【企業PROFILE】
一般社団法人
ファクトリーサイエンティスト協会
会社情報:
https://www.factoryscientist.com/
メールアドレス:
offfice@factoryscientist.com
※お問い合わせ等は事務局宛にお願いします