ジャン=フランソワ・ミレー作品の収蔵でも全国的に著名な〝山梨県立美術館〟。今回は、収蔵美術品ではなく、建築物にフォーカスします。ワインレッドのレンガ外壁も鮮やかでシンプルな佇まい、この建築物の設計は、前川國男氏によるものです。前川氏は、日本人では初めてモダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエの事務所で学んだ建築家です。帰国後、日本建築界を牽引し、坂倉準三氏、吉村順三氏らと共に、日本の近代建築の礎を築いた一人です。その作品群の一つとして山梨県立美術館があります。
コルビュジエ作品を彷彿させるエントランスのピロティ、吹き抜けのホールなど、美しいフォルムを至るところで目にします。ちなみに前回の同コーナーで紹介した山梨文化会館を設計した丹下健三氏は、一時期、前川國男設計事務所に籍を置いた時期もありました。両巨匠の残した名建築が、甲府市内に2か所も現存し、山梨県民の文化・芸術面での貴重な資産をいつでも見ることができる幸運に、豊かな気持ちになります。
美術館で収蔵美術品を鑑賞し、建築物にも想いを馳せ、1階にある静かで落ち着いたレストランでひと時を過ごす休日も素敵かも知れません。
山梨県甲府市貢川1-4-27
1978年竣工(2023年に開館45周年を迎えた)
【山梨県立美術館内レストラン Art Archives(アート・アーカイブス)】
(2004年竣工)