著者:中貝 宗治
集英社新書
定価:1,000円(税別)
人口減少、高齢化、大都市への人口移動など、地方の縮小が止まらない。地域活性化、移住促進など、政策による取り組みなども数多く実施されているが、日本全体でも短期間に人口増加に転じることは、誰が考えてもあり得ないことはわかる。日本全体で市場が縮小する中、都市部のコピー版のような地域活性化や地方再生に無理はないか。その一つの回答となり得る取り組みが、グローバル・ローカルと言われる豊岡のチャレンジである。
著書では、この地域で姿を消したコウノトリの野生復帰プロジェクト、志賀直哉の「城の崎にて」の舞台、城崎温泉でのインバウンド需要、城崎国際アートセンターを中心とした演劇振興などの取組みについて、様々な意見が交差する中、地元住民のベクトルがどのようにして一致していったか、県外、海外から注目されるようになった経緯をわかりやすく解説している。これまでの価値観を転換し、広さや量ではなく、深さを追求する。商売、利益追求優先ではなく、文化・芸術・教育・環境・多様性を基軸に深さを追求し、世界に注目される「小さな世界都市」を目指した豊岡の取組みは、これからの地方再生の一つのモデルであることがよくわかる。