人口80万人を割った山梨県。高齢化率も高く、働き手の数は益々減少していきます。
毎年ダボス会議で発表されるジェンダーギャップ指数は、調査対象国の中で常に下位に甘んじており、女性が活躍しにくい国としてイメージが固定化しつつあります。
人材が不足しているにも拘わらず、業種・職種による男性・女性従業員比率の偏りが顕在化していて、日本の労働市場は、人材確保・活躍の機会を逸失しているとしか思えません。
山梨県も同様であり、製造業で女性社員が当たり前に活躍する社会、多様性を受け入れる社会実現は、これからの県内企業の存続のための生命線と言っても過言ではありません。
今号は、男性よりも様々なハンデを現実的に負いながらも、男の仕事と言われてきた業種・職種で奮闘する女性の姿を追いました。
「製造業はアリ!」と声を揃える4名の女性社員。 自分の意思でものづくりの仕事を志し、活き活きと活躍する彼女たちのリアルな胸の内にフリーアナウンサーの三浦が迫ります。
司会進行
フリーアナウンサー
三浦 製造業で働くことになった経緯(ポリテク入所の経緯)を教えていただけますか?
秋山 以前は建設業で事務をしていましたが、「身体を使って仕事をするっていいな」と思うようになったことがきっかけ。事務作業の合間に現場に行かせていただくなどしていました。ただ、トイレのない現場(土木場)などもあり、ちょっと困りまして…。それでも、ものづくりの仕事が気になっていたのでポリテクの存在を知って、まずは学ぶ気持ちですぐに行きました。
住野 私は妊娠を機に前職を退職したのですが、次は違うことがしたいと思っていて。スマホで調べてポリテクを知り、興味を持ちました。もともと父が工場勤務だったこともあり、油などの工場特有の匂いやよごれにも抵抗がなく、きっかけさえあれば…と思っていました。ポリテク入所は、無料託児サービスのことも大きな決め手でした。
上野 前職は倉庫内のピッキングをメインに、手作業で仕事をすることも多く「目の前で完成するのを見るのはいいな」と思っていました。製造業への転身のきっかけは、ポリテクが主催する『女性のためのものづくりセミナー』。自分に何ができるか考え、CADができる事務員になろう!と、目指したい方向ができたんです。
芦沢 私は以前の職場で妊娠をきっかけに辞めた板金屋さんがあり、溶接に興味を持っていたんです。学べる場所がないか調べてポリテクを見つけ、実際にやって見ると、首の弱い私にはマスクが重くて…。ほかの作業をいくつか体験する中で専攻を決めてポリテクに入所しました。
三浦 皆さん、前職の時代からものづくりに興味をお持ちだったのですね。実際に働いてみて、どうですか?
秋山 はじめ、機械の油っぽい匂いやよごれを避けたくて、機械加工の会社は遠慮していたんです。ところが、実際に来てみたら思っていたよりも綺麗!環境に対するイメージがプラスに変わりました。
住野 同じ会社内でも、私の仕事は油だらけになります。すごく汚れるので、洗濯も別にしています(苦笑)。仕事はとても楽しいです。
上野 匂いのことは確かにネガティブなイメージを持っていましたけれど、〝女性に限らず〟だと思うんですよね。平気な人は平気ですし、人によると思います。
三浦 なるほど。人間関係などはいかがですか?
住野 私のいる部署は男性しかいないので、コミュニケーションに悩むことがないわけではありませんが、社長を含めて皆さん気遣ってくれて、相談に乗ってくれる。だから、大丈夫です。
芦沢 人間関係とは異なりますが、寸法が厳しい製品を製造しているからこそ、温度管理もしっかりとしなければいけない。つまり、職場は夏でも涼しく、冬場も一定。室内がとても快適です(笑)
三浦 そっか!エアコンが効きすぎて寒い!とかもないんですね(笑)。皆さん、女性ならではの働きにくさ、を経験されたことは?
上野 本当に何をするにも重くて辛かったことはあります。でも、周囲が助けてくれました。それに最近は重いものを持ち上げる作業をサポートする道具など、設備が整備されてきています。
芦沢 私、負けず嫌いなんです。だから、男の人と同じものを持とうとするなどして、腱鞘炎になったことがありました(苦笑)。今はいろんな機械でカバーしているので、〝女だから〟ということで、それほど働きづらさは感じません。
住野 私も負けず嫌い。重いものを持ち上げるためだけに人を呼んでくるのが申し訳なくて、悔しいと思うことはあります。でも、頼ってやっていこうかなと。できないことはできないから、助けてほしいと言えるようにしようと決めました。ハンデと自分で思わないようにしたいと思っています。
上野 分かるなぁ。人に頼む、というのは時々ストレスになっちゃう。
住野 毎回ですからね。「作業の邪魔してごめんなさい…」という気持ちになってくる。
秋山 私の仕事は力で困ることはほぼありません。ただ、思っていた以上に重労働ではある、くらいかな。働きづらさ、ありません。
三浦 お子さんのいらっしゃるお二人は、仕事と子育ての両立もしやすい職場と感じていますか?
住野 はい。今は時短勤務ですが会社の方と家族の理解があってこそだと思います。余談ではありますが、油でよごれた手指を家族が褒めてくれるのも嬉しい。「頑張っている手だよ」と言ってくれます。
芦沢 私はシングルマザーです。さらには実家が静岡で、気軽に親族に子どもを預けられないので残業ができない。けれど、会社が理解してくれているから、調整ができています。それぞれの事情を理解するのも信頼関係だと思っています。
三浦 最後に、ポリテクを受講してよかったことを聞かせてください。
秋山 この会社と出会えたことかな。ポリテクは訳あって早く卒業したのですが、親身になって話を聞いてくれるなど、ポリテク求人最高です!
住野 子どものことで頭がいっぱいだった時に、安心して預けられる制度がポリテクにあったことです。子どもにとってもいい経験になったと思うし、本当に助かりました。
上野 ポリテクは周りもみんな求職者。就職に対する意識を高く保てたことはよかったな。自分にできる仕事なんてあるのかな…と先生に聞いたら、教えてくれて、内定。やっぱり、ポリテク求人は最高でした。
芦沢 私は現場の感覚を先に知れたことかな。私も就職が決まるのは早かったのですが、せっかくだから半年の期間ちゃんと受講したいと希望を出して、就職を待ってもらったんです。普通、自分で探して就職したら、3ヶ月間待ってもらうなんて難しい。これは、会社側もポリテクを信頼しているからなんだと思っています。
三浦 製造業に、女性。アリですか?
全員 アリです!
秋山 女の人の目線からでしか見えない何かもありますしね。空間に女性がいると活気も出てきますし、綺麗にもなる。
上野 だね。女性にとって働きやすい職場は、男性にとっても働きやすい職場になると思います。
株式会社中家製作所
代表取締役
弊社は金属を加工して半導体装置の部品や周辺装置を製造している会社です。工場では重量物を扱うことが多く、やはり元々は〝男社会〟のような側面がありました。しかし、ポリテクセンターさんの助言をきっかけに、ここ7年くらいは採用の幅を広げ、女性も働きやすい職場環境づくりに動いています。
女性の積極採用を開始して以来、指導案をまとめることにはじまり、工場や社内の環境の見直しなども行いました。工場内の器具・設備を整えて用意対応することのほか、環境面でアメニティの工夫なども行なっています。
製造業には女性が活躍できる場面もたくさんあります。作業自体が難しければ、できるように環境を整えていけばいい。大切なのは学ぶ気持ちや目的意識を持って、チャレンジしてみること。そういう観点で、ポリテクを修了した女性
員は本当に作業も丁寧で根気強く、皆さん優秀で助かっています。
これからの雇用は女性抜きでは考えられません。ものづくりの現場で女性が輝けるように、環境を整えていくのが企業側の責任だと感じています。
所在地: 中巨摩郡昭和町築地新居1641-8
TEL. 055-275-5533
事業内容: 精密機械加工、装置の設計制作組立
(半導体製造装置部品加工)