地域の風景としての古民家

that's renovation

温故知新
山梨県古民家再生協会

左から順に、副理事長・事務局長の市田さん、代表理事の佐野さん、理事の山中さん

空き家問題を抱える山梨県。日本古来の木造住宅における大工の技、梁や柱に使用されている見事な木材を次世代に残したいという想いと、空き家対策への対応も目的として、古民家の再生に取り組む “一般社団法人 山梨県古民家再生協会” をご紹介します。

古民家再生に同志が結集

一般社団法人 山梨県古民家再生協会は、代表理事の 佐野 敏男 さん((有)佐野工業 代表)が、前述した理由から、古くなった空き家を壊して安易に新築する風潮を憂い、何かできないかと考えている時に、全国古民家再生協会の活動を知り、その山梨支部として2008年に活動を始めたのがきっかけです。その後、山梨県の地域性に合った事業展開を目指し全国組織から離れ、現在は独立して活動を続けています。会員数は14名で、みなさんそれぞれ多忙な本業の傍らで、当協会の事業に取り組んでいます。当協会の役割や古民家再生の意義などについて、代表理事の 佐野 敏男 さん、理事の 山中 貞行 さん((有)ヤマナカ産業 取締役会長)、副理事長・事務局長の市田 仁 さんにお話を伺いました。

古民家再生の意義

古民家のリノベーションは、再生の前に必ず一部解体作業が伴います。その際に、先人の大工の職人技による加工に出会うことが度々あるそうで、リノベーションを通して、現役の大工が学ぶ機会になること、今では手に入らないような材を使っている物件に出会うこともあり(古材は宝物)、今の建築業界の人材育成にも大きな影響があるとお聞かせいただきました。この経験を通して、その技能を途切れることなく次世代に伝承できる貴重な取り組みだと言えます。また、古民家の再生は、その建物の歴史や果たしてきた役割に想いを馳せることも大事で、使える古材はメンテナンスをしてできるだけ活用し、古民家に敬意を持ってその面影を次世代へ残していけるように古民家再生に取り組んでいきたいとも仰っています。

武川のリノベーション古民家

古民家を次世代に残したい

最近は、投資目的に古民家再生の相談もあるそうで、前述したように、再生した古民家が次世代で新たな役割を担い、その地域に根差して残っていくことが重要で、利益だけが目的の消耗品的な古民家再生はお断りしているそうです。リノベーションの技術的サポート、建物のメンテナンスについても、オーナー様に寄り添って、古民家の新たな歴史を刻むお手伝いがしたいと、古民家愛を感じるお話しもいただきました。また、古民家ファンを増やすために、子供達向けに、古民家での様々な体験を今後企画し、現代建築では味わえない楽しさや不思議さなどを感じてもらい、作り手、使い手双方の人材の育成にも努めたいと仰っていました。


今回の取材でお聞かせいただいたとおり、その地域にある古民家は長い歴史とそこにある意味をそれぞれ持っていて、地域の風土を形成してきた建築物です。家が、耐久消費財のように取り扱われ、古くなれば壊し、また新しい家を建てると言った消耗型の消費サイクルは、人口減少が続く地方にはもはや馴染まないのではないかと思います。新たな需要を否定するものではありませんが、口先で持続可能社会を標榜するのではなく、ヨーロッパの田舎の古い街並みの景観や、食器や道具を何代にも渡って大切に使い続ける味のある生活習慣が、人口が減少し続ける日本の文化に馴染むように思うのは筆者だけでしょうか。

一般社団法人
山梨県古民家再生協会
山梨県 南アルプス市小笠原9番地
小笠原ギャラリー古今(ここん)内
事務局(北杜オフィス)
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【電話番号】080-1015-3323