
発行:株式会社学芸出版社
著者:尾家建生・高田剛司・杉山尚美
定価:2,200円(税別)
最近よく耳にするガストロノミーツーリズムは、フランス語の「gastronomie(美食)」、英語では「gastronomic experience(美食体験)」を基にした旅行体験のことです。最近のインバウンドの特徴として、中国やヨーロッパの富裕層の旅行客などは、マスツーリズムのメンバーで来日することも、爆買いすることもなくなってきています。単なる観光ではなく、その場所を訪れなければ体験できない食、文化、伝統などだけを目的に来日する方が増えています。その傾向の一つである「フードツーリズム」の由来や人を引き付ける魅力などを解説する著作を紹介します。
ガストロノミーの歴史、ヨーロッパでの実情、日本での事例など多角的な解説を、事例に基づき展開しており、ガストロノミーの深さを知ることができます。高級レストランの高級料理を追い求めることがガストロノミーではなく、地域、風土、生産者、食習慣など様々な要素からなる文化であること、その場所に行かなければその本質を理解できないことなどがよくわかる著書です。世界各地にそのような食文化は数多く存在し、付け焼刃ではできない体験をツーリストに提供できる重要なレガシーであることを改めて再確認できます。固有の食文化が地方・地域の魅力発信に繋がるか、ガストロノミーツーリズムが地方の活力源になり得るか、そのための基本を学ぶ導入編にお勧めです。