Make You Happy

地方の活力/新たなる挑戦

8月末の山梨日日新聞一面に、山梨県の人口が2100年に30万人まで減少するという記事がありました。これは、国立社会保障・人口問題研究所のシミュレーションによるものですが、2100年に30万人の人口になるという結果が問題なのではなく、30万人まで減少するプロセスが既に進行しており、山梨県のすべての社会システムが機能しなくなることへの対応を急がなければならない現実です。人口減少と共に、県民の高齢化率は益々上昇します。労働市場も例外ではなく、益々人材確保が難しくなることも明白です。今号は、全ての市場が縮小する中、新工場建設、設備投資、事業拡張など、新たなる挑戦を続ける企業にフォーカスしました。経営環境が厳しさを増す中、新たなる挑戦に取り組むその原点は何か、人材確保難に対応するための戦略は何かなど、その秘密にクローズアップします。

社会の繁栄と発展に貢献する企業として
『未来への投資』を推進

日邦プレシジョン
株式会社

新工場増設で競争力を強化
多様なニーズに応える、
新たな挑戦が始まる。

日邦プレシジョンは1984年に名古屋にて創業し、その翌年、創業者である現会長の故郷山梨に戻り、近隣に取引先企業がある韮崎市に第一工場を建設。半導体製造装置及び検査装置、周辺自動化装置の設計製造を目的に事業をスタートして以来、今日まで40年以上にわたりこの分野で高い評価を得て、社会の繁栄と発展に貢献してきました。近年、半導体及び検査装置市場は著しい拡大をみせており、日邦プレシジョンが果たす役割は非常に重要なものになっています。そんな中、2024年に第六工場が完成。まさに『未来への投資』と言える新たな挑戦が、将来性のある製品開発の原動力になろうとしています。「弊社は主に産業用の装置の設計製造を行っています。産業用機械設備というと結構範囲が広いですが、その中でも特に半導体関係の装置を多く扱っています。設計製造を一貫して行える組織体制を整えており、設計部は、メカ設計、エレキ設計、ソフト設計の3つの部門があり、製造部門は主要なお客様に対応する形で、第一製造部、第二製造部に分れて製造を行っています。弊社が扱っている製品は一般消費者の方々のお手元に届くものではありませんが、社会の発展のためになくてはならない製品だと言えると思います。私たちは先端技術の研究、開発、製造を通して社会貢献していくことを常に目指しています」と、お話を聞かせてくださったのは、代表取締役社長の古屋俊彦さんです。

半導体製造装置及び検査装置、周辺自動化装置の設計製造で培った技術やノウハウを赤外分光計、赤外顕微鏡等理化学関連機器の分野にも応用。またコンピュータ応用自動検査システムをはじめFA、搬送ロボット及び制御装置等、先進のメカトロニクス製品の設計製造でも成果をあげ、半導体や液晶の製造プロセスを担う企業として成長し続けてきた日邦プレシジョンは、将来性のある主力事業として、テラヘルツ分光装置の開発から製造販売、また国や山梨県も推進している次世代クリーンエネルギーである水素燃料電池の研究開発にも取り組んでいます。

「テラヘルツ分光装置は半導体とは一線を置いた製品の性格ではありますが、これまで培ってきた経験と知見を元に自社で独自の分光装置をつくってみようという取り組みが20年ほど前から始まり、現在自社製品としてテラヘルツ分光装置の製造と販売を行っています。テラヘルツという波長領域の特性は、医療分野や半導体等の産業分野など、さまざまな分野への応用が期待されています」と教えてくださったのは設計部・部長代理の森晴一さんです。

設計部 部長 保坂 忠良さん 代表取締役社長 古屋 俊彦さん

設計部 部長代理 森 晴一さん 総務部 部長代理 望月 直人さん

研究開発型企業として、
新たなモノづくりに挑み続ける

日邦プレシジョンは研究開発型の企業として、大学や研究機関との連携も図っています。「弊社が大学や研究機関とコラボレーションしている事業は、テラヘルツ分光装置と、水素燃料電池の2つに特化しています。テラヘルツや燃料電池の先進的なところは、やはり私たちの知見だけでは限られてしまう部分があり、なかなかブレイクスルーのようなものが出るのは難しいです。その中で先端の研究開発をされている大学等と一緒にやらせていただくことで、弊社は新しい知識を得るという恩恵を受けています。大学の知見と弊社の技術力の融合が新たなモノづくりにつながっていると感じています」と社長。先端的な事業に取り組む開発型企業としての人材育成については「知識はより良い発想につながるので、知識を持って入社してくれることは有り難いです。ポリテクセンターの修了生も活躍しています。ですがたとえ専門知識を持たずに入社したとしても、先輩社員が一から教えますし、資格取得を応援する制度もあるので成長していくことができます」と、これからを担う人材に期待を寄せる設計部・部長の保坂忠良さん。

第六工場も稼働し、生産性の向上やセキュリティ面の強化も進み、更なる躍進が期待されている日邦プレシジョン。省人化等の取り組みや地域との関わりについては「弊社は業態的に少量多品種生産で、ハンドメイドの部分が多いため、自動化や省人化は難しい部分がありますが、DX化の推進や生成AIの活用促進に取り組んでいます。ニラサキオープンファクトリーという、工場を開放するイベントにも参加して、地域の皆さんに弊社の仕事を知っていただく機会も設けています。子どもたちがモノづくりに興味を持ってくれたら嬉しいです」と総務部・部長代理の望月直人さん。

「半導体に関係する業界は今非常に注目されており、これからも間違いなく発展していく業界です。その中でさまざまな可能性を模索しながら製品の研究開発を進めていきたいと思っています。水素燃料電池についても会社を挙げて研究に取り組み、持続可能な社会づくりに貢献した色考えています」と語る社長と社員のみなさんの表情からは、新しいモノを世の中に出していく仕事への誇りが感じられました。

日邦プレシジョン
株式会社

所 在 地:
山梨県韮崎市穂坂町宮久保734
TEL.0551-22-8998
事業内容:
導体及び液晶パネル製造装置、
検査装置の設計・製造