New regional era


リピーターに
愛される
お店を目指して

八ヶ岳南麓、長坂町の森に佇むフレンチレストラン“コントラスト[Contrast]”。地方の新しい形を象徴する当店にフォーカスします。

あえて八ヶ岳南麓で、フレンチレストランを経営する意味や背景について、経歴も含めてオーナーシェフである 小池 秀樹 さんにお話を伺いました。

シェフ
小池 秀樹 さん

多彩な経験が今の料理の原点

オーナーシェフの小池さんは山梨県出身で、料理人人生は、新宿のパークハイアット東京への就職から始まります。その後かねてから経験を積みたいと希望していたヨーロッパに渡ります。フランス、ベルギーで研鑽を積み、パークハイアットの先輩からの勧めで、東京のお台場、ヴィーナスフォートのカジュアルフレンチレストランのオープニングスタッフに加わるため帰国します。そして、やはり先輩の口利きで、小池さんの料理人人生に大きな影響を与えた“フランス料理ミクニナゴヤ(世界的な料理人である三國清三氏の運営するレストラン)”と出会います。この時のシェフが、三國氏が熱心に勧誘した当時スイスのジラルデでスーシェフを務めていた“北村竜二”さん(現在は、ラ・グランターブル・ドゥ・キタムラのオーナーシェフ)で、そのシェフの下で、貴重な経験をすることになります。ミクニナゴヤは、メニューの変更が頻繁に行われるお店で、そこで働く料理人は、アイディアを出し、厳しいダメ出しを何回も経験しながら過ごすことになります。この時の経験が、コントラストのメニューを考案する際の引き出しの多さに繋がっているのかも知れないと仰っていました。その後、グランドハイアット東京のオープニングスタッフにも関わり、調理師専門学校の先生も経験するなど多彩な経験を積んで、三國清三さんがプロデュースした清泉寮新館のオープンに合わせてメインダイニングのシェフとして、出身地山梨県に戻ることになります。北杜市大泉のフレンチレストランのシェフを8年務めたのち、オーナーシェフとしてコントラストをオープンしました。料理人の仕事としての8割が、それぞれのオープン時が多く、白紙から店の骨格を積み上げていくプロセスを経験できたこと、前述の三國さん関係の仕事で、料理に対する向き合い方を学べたこと、ヨーロッパでの経験で異文化の料理、生活に触れることができたことなど、全てが今の料理人“小池秀樹”さんを形成してきた要素なのだなとお話を伺いながら感じました。

東京と地方との事業スタイルは違う

これだけの経歴をお持ちの小池さんであれば、東京の一等地でレストランを開いても、食通から支持を得られるお店として人気を博せると思いますが、何故、八ヶ岳南麓の決して交通の便が良いとは言えないこの地で、自分のお店を開こうと思ったのかについてもお聞きしました。「地元食材(特に野菜は、山梨県近隣、長野県などにも美味しいものがある)が手に入りやすいこと、そしてロケーションです。

また、自分は、牧歌的な環境で仕事をした方が、インスピレーションも浮かぶし、仕事の生産性も上がるように感じている。ミシュランガイドの有名店や、スターシェフのいるお店は、それはそれで凄いとは思うが、自分には向いていない。八ヶ岳南麓は、一元のお客さんよりも、常連客の比率が高く、ある意味、常連さんに喜んでいただくには、努力も必要だし、それが自分の成長にも繋がると考えている。」とお話しいただきました。各地方でお店を展開する実力者が、今増えつつありますが、まず感じることは、東京の同じレベルのお店よりも確実にリーズナブルであること、お店のコンセプト、スタイル、ストーリーが前面に出ていないので、ゆったりと食事そのものを楽しむことができることを強く感じます。栄誉や売上よりも、常連のお客さんが特別な日のランチやディナーに、当店を長く利用してもらえる自然体のお店であり続けたいとも仰っています。利用客が、東京の一流店とは違い、ゆったりと小池さんの料理で、友人や家族と楽しいひと時を過ごせるのは、この小池さんのお店への想いがあることに思い至るお話でした。

拡大よりも持続

将来のビジョンについてもお聞きしました。まだ、自分の店を始めて間もないので、長くこの地で営業できるよう地道に土台を固めていきたいこと、多店舗展開など事業拡大は考えず、料理のプロデュースなど、自分の名前が出ない形で、近隣の他店とのコラボレーションで、経営基盤を強化していきたいとお聞かせいただきました。また、かなり先になるかも知れないが、敷地内に宿泊施設を建てて、オーベルジュの形態も少し念頭にあるともお聞かせいただきました。ゆっくりと宿泊して、小池さんの料理を堪能できる日を想像すると本当に楽しみです。どのようなスタイルのレストランを選ぶか、それは利用者の嗜好の自由です。ただ、一昔前は地方では選択肢がなく、東京や大都市に行かなければそのような経験ができなかった時は終わりました。事業者のビジョンの違いで、東京や大都市ではなく、地方でも経験豊富な小池さんのような方が増え、東京対地方という対比的発想を辞める時が来たのかもしれません。

【企業PROFILE】

コントラスト
山梨県北杜市長坂町大井ヶ森1113-4