Column
1985年(86年施行)、男女雇用機会均等法が制定されて来年で40年。ここ数年、SDGs推進のための目標にも掲げられ、ダイバーシティ経営について、多くの専門家がその重要性を説いています。それにも拘わらず、未だジェンダーバイアスは、しぶとく蔓延り、ジェンダーギャップは依然としてそこかしこに散見します。特に、日本独特の業種・職種でのジェンダ ーの偏りの改善はいまだ進んでおらず、製造業や建設業での女性活躍が当たり前の社会はいつ訪れるのか、生産年齢人口が減少の一途である山梨県においても、若年の男性人材に拘泥する経営者を見ると、今のこの労働市場の変化をどのように解釈しているのか、首を傾げることも間々あります。お題目で、人材の多様化を掲げるのではなく、事業を後世に引き継ぐためには、老若男女、障害をお持ちの方、外国人、それぞれの個性に立脚した企業運営が必然であることを社会全体が理解すべき時です。
今回の女性セミナーは、製造業や建設業と言った技術系現業職において、もっと女性が活躍できるようになるには、何が必要か、経営者の意識改革、一緒に働く男性社員の考え方、女性当人の意識の変革、社会的バイアスの払拭、要因は多種多様だと思いますが、製造業の企業トップとして日々奮戦する女性経営者と共に、今後のあって欲しい社会像について迫りたいと思います。
【SPEAKER PROFILE】
(株)セブナ装機
(有)エー・アイ・エーブラスト
代表取締役社長 一戸 亜土 氏
佐野電機エンジニアリング(株)
代表取締役 荘司 祐理 氏
FACILITATOR
製造業は女性に向いていないのか
一戸社長「女性が製造業に何で向いてないと思うのか?製造業で仕事をしている身から考えると理由がわからない。確かに昔は、男性職場の風習が数多くありましたが、今はほとんど改善されているし、ものづくりが、好きか嫌いかが大事で、適性が高ければ性別は関係ないと思いますよ。昔からのイメージで製造業を見てしまうと判断を誤るので、今日はぜひその情報をアップデートして帰って下さいね」
荘司社長「製造業と言っても、生産部門以外にも、生産管理、購買、品質管理、検査・検品など多くの職務があるので、女性が製造業に向かないとは思えません。最近は、デジタル化により生産そのものもマニュアル化されてきており、経験や性別はそれほど影響しないようになって来ています」
FACILITATOR
男性に比べて体力的に女性は不利ではないか
一戸社長「単純に体格面や腕力などだけを比べれば絶対に不利ですよ。ただ、それをハンデだと思わないで、体形的に小さいのであれば、それが向いている作業もあるし、体力を問わないスキル面で会社に貢献すれば良いし、性別による体力差は個性だと考えればいいのではないでしょうか」
荘司社長「仕事は一人でするわけではないので、チームとして自分ができる部分に貢献すれば良いと思います。実際に現場では、社員同士お互いに足りないところを補い合って、製品を完成させています」
FACILITATOR
トイレ、化粧スペース、更衣室など、男性仕様になっていませんか
一戸社長「トイレ、化粧室問題は重要です。今も改善をどうしていこうか、社内で検討しています。社員食堂をリニューアルする予定なのですが、その原案は女性目線で考えていこうとプロジェクトを起ち上げました。その中でも、トイレをどうするかなどを話し合っています」
荘司社長「当社は、配電盤の製作会社ですが、時々、建築現場で据え付け工事を担当する時もあって、そういった時は、仮設トイレなどを利用しなければならないので、非常に大変ですね。ただ、最近の現場で、大手のゼネコンさんが、男女別の仮設トイレを用意してくれたりなど、配慮いただけるようになってきました」
FACILITATOR
製造業の作業着が野暮でイメージが悪いと感じている人も多いですが、
ワークウェアで工夫などしていますか
荘司社長「当社では、昭和の町工場の雰囲気の作業服だったのですが、社員の評判も良くなかったので、指定作業服の支給を止めました。経費は会社持ちで作業服を自分で選んで着てもらうようにしています」
一戸社長「左肩背面に、社員と一緒に考えた言葉を入れたワークウェアに変えました。部門によって着用するワークウェアは違っていて、気持ちが上がるという社服であることも重要ですが、安全のための防御服でもあることを忘れないようにしないといけないと思っています」
FACILITATOR
製造業は勤務時間が管理しやすいという、
働いている方からの意見がありますが、いかがですか
一戸社長「製造業は生産計画に基づいてチームで仕事をしているので、子供の関係で休みたいとか、残業は出来ないというようなケースでも、自分が就労できる時間内にやれることを精一杯やってくれているので、チームの他のメンバーも協力して、プライベートの事情に対応できるようになっています。目の前のお客様に対応している業種よりも時間管理はある程度できると思います。シフト制もやっていませんし、突発的な残業もあまりないので、家庭生活との両立はしやすいかも知れません」
荘司社長「一戸さんの会社と同じように、家庭生活との両立は当社でも十分配慮できると思います。それぞれが普段一生懸命に仕事に取り組むことで、相互理解が深まり、助け合えるような雰囲気があります」
ACILITATOR
女性の管理職やリーダーへの登用について
一戸社長「管理職のイメージは男性を思い浮かべませんか。ロールモデルが必要です。女性のリーダーが増えていくには、実例が増えていくことが重要だと思います。みなさん、ぜひ一緒にそのバイアスを払拭しませんか。また、経営者が単に役職者になって欲しいではなく、リーダーとして何を期待しているのかを具体的に説明することが重要だと思います」
荘司社長「当社にはまだ女性のリーダー職は残念ながらおりませんが、この業界に多くの女性に入ってもらって、ロールモデルが多くなり、業界内から変わっていかないといけないと思っています。今日ご参加の皆様には期待しています」
トークセッション終了後、ポリテクセンター山梨で実施されている訓練コースの実習場見学後、2グループに分かれてグループセッションを実施。車座トークで個別に質疑を行いました。(詳しくは、こちらの「お知らせ」よりレポートをご覧ください)