大月市に本社機能を置く「山陽精工」は、難削材の加工をはじめとする精密な切削に絶対の自信を有する企業。「先代社長が生まれ育った大月市に会社を起こし、モノづくりをベースに成長してきました」とインタビューに答えてくださったのは同社の2代目社長・白川太さんです。「当社は農家の長男であった私の父が二十歳をすぎて『自分で何かしたい』と起こした会社です。父は岩殿山に登って考えを巡らせていたそうですが、その際に目に留まったのがJR。『この町には人が流れてくる』と直感し、何か新しいものをつくってみようと製造業にチャレンジすることを決意。丁稚奉公のように企業で学んだあと、自分で小さな機械を買って、仕事を受けることからスタートしたと聞いています。時代は高度経済成長期、新参者の「山陽精工」には他社が断ってしまうような仕事しか回ってこなかったそう。しかし、そうして人がやらないような難易度の高い製作をこなしていくうち、着実に成果と評価を得ていったのが当社です。気づいたら『自分たちが普通にやっていたのが、実はかなり難しいことだった』というようなレベルに引き上げられていました」と白川社長。根底にあるのはチャレンジ精神。創業以来、請けた仕事を一度もギブアップしたことがないという、創意工夫と難しいテーマこそ楽しもうとする姿勢が当社の成長を支え続けています。
金属の切削加工にはじまり、現在では医療機器や商品開発にも注力する同社。事業拡大のきっかけは、バブル後の危機感にあったそう。「下請けの仕事を続けるだけでは厳しい状況になり、改めて企業としてのビジョンを明確にしました。その際、話し合いの末に完成したのが『自分の子どもを入社させたい会社』という当社の経営理念です。自分たちの強みをさらに伸ばすことはもちろん、独自の製品を持つメーカーになることを目指し、商品開発をスタートしました」
「売上の70%を女性がつくっていると言っても過言ではない」と人材開発室室長の小泉利明さん。女性が活躍するその背景には、東京に近く、人材が流出しやすい地域の特性があるといいます。「人が採用しづらいという地域柄、人材開発には長く悩まされていたため『働き方改革』という言葉が表に出るよりも前から教育制度を整備したり、多様な人材を積極的に採用したりという取り組みを行ってきました。現在も新卒採用のうち30%以上は女性。今後は50%、そして女性管理職を増やし、女性だけで運営する工場を実現したいと考えています」と続けます。「採用コストを下げながらいい人材を発掘することはもちろん、長く勤めてもらうためにはどんなサポートが必要かを考え、社内の風土を整備するのが私たち総務部の仕事。例えば女性であれば、結婚して子どもが生まれても育児をしながら働ける組織風土やステップアップしやすい環境が整っていれば心地良く働くことができますよね。当社では、時短勤務も子どもが中学に上がるまでOK。私たちはモノづくり企業。いいものを作るためには、作り手である社員たちに会社を楽しいと思ってもらうことが重要です。こうした取り組みを加速させることで、男女ともに離職率が下がっています」と総務部の笹𥔎さんが聞かせてくれました。
また、近年は大月で働くというイメージを変えていく街ぐるみの取り組みにも参画。「大月市が行うeスポーツの大会にブースを出すなどして、大月市にも事業所があるというアピールを行なっています」と人材開発室で広報を担う須藤さんが話してくれました。