Column
ARMS株式会社 代表取締役会長
職業訓練法人H&A 理事長
GTS協同組合 専務理事 濱島 正好 氏
国立社会保障・人口問題研究所の人口統計(出生中位・死亡中位)によれば、今後10年で生産年齢人口は500万人以上減少します。少子化問題が短期的に改善しないことは誰が考えても明らかであり、働き手の確保は、企業存続の生命線を握る最も重要な課題と言えるのではないでしょうか。
選択肢は二択です。デジタルテクノロジーによる徹底した省力化と人材ポートフォリオの多様化です。外国人労働者にフォーカスし、長年にわたり愛知県の産業界で外国人技能実習生の教育と就労支援を行ってきたARMS株式会社 代表取締役会長の濱島 正好氏に、外国人との協働について、今後の考え方、姿勢についてお話を伺います。
外国人から見て、日本の労働市場はまだ魅力的ですか
「10年前と比べて、技術、報酬面でそれほど日本に魅力を感じない国も多くなっています。今は、ベトナム、インドネシア、フィリピンの方が主流で、中国の方は、全体の10%も居ないんじゃないですかね。円安やGDPの減少など日本産業界の国際競争力の低下と言う背景もありますが、一部の企業での、外国人技能実習生や労働者への処遇の悪さや、労働環境を整備してこなかった日本産業界の対応の問題がつけとなってきているように感じています。それでも、中国の高度人材の方には、欧米の方がはるかに高い報酬をもらえるのに、日本の企業を選ぶケースがあって、理由を聞くと治安が圧倒的に良いことと、日本人が親切だと言ってくれる人もいます。ある意味、日本の労働市場のアドバンテージではないですかね」
特定技能制度もあり、外国人労働者への需要は大きくなっているのでは
「様々な産業で、人材不足は顕在化していて、外国人労働者に依存する傾向は確実に強くなっています。今年、北海道の観光産業の人材不足に対応するため、インドの方とのマッチングなどに参画したり、全国様々な地域・産業界との繋がりが増えています。今後益々受け入れ態勢の整備が必要になってくるのではないでしょうか」
今後、外国の方と一緒に働いて行く上でどんな姿勢が必要ですか
「これまでのイメージだと、底辺層の作業職を外国人労働者が担うという構図が思い浮かびますが、中核人材として十分戦力になる方や、向上心旺盛の方など、職業のスキルレベルや適性も多様です。コスト軽減という視点ではなく、戦力としての人材確保や育成を経営戦略的に取り組むことが、今後重要ではないかと思います。しっかりした日本語教育、日本の職場で必要な資格教育などにきちんと取組み、外国人が組織の中枢を担うケースが多く出てくる時代ではないでしょうか。また、特定技能2号による在留資格者は、家族も呼び寄せることができるようになったのですが、現在の法律下では、家族が自由に働けません。外国人が、日本人がではなく、日本で働き生活する者にとって、生き甲斐・働き甲斐、そして幸福を追求できる社会環境こそが、多様性社会実現のための絶対条件だと思います」
日本の技能実習制度は、安い労働力を合法的に如何に利用するかと言う思惑が強かったように見えます。今後、外国人が日本で働くことの優位性は益々低下し、外国人に選ばれない労働市場になることも考えられます。この現状を踏まえて、2027年に「技能実習制度」は「育成就労制度」に様変わりする予定です。生産年齢人口が減少する日本の労働市場で、外国人とどのように共に働くのかを真剣に考える時節が来ました。