創業1970年の昭栄精機が、東京に本社を置く「カシワグループ」の一員となったのは2017年12月。株式譲渡による事業承継から6年。社員と設備をそのまま受け継ぎながらも、同社は変化の真只中。とくにここ数年の社内環境の整備は著しく、長く勤務するスタッフから「会社っぽくなった」という声も聞こえてきます。
昭栄精機の主な事業は精密部品切削加工。NC複合自動旋盤や複合旋盤、マシニングセンタを中心とした機械を用いて、半導体製造装置や医療機器などに搭載される、フランジ・シャフト・ネジといった小径の精密部品を製造しています。
「特徴は、ミリ単位の細かい部品を得意としていること。短納期、少量多品種、そして難しい素材にも果敢にチャレンジしていく姿勢と対応しうる技術者が在籍する企業として県内で信頼を得ていました」と代表取締役社長・佐藤元章さん。カシワグループとのM&A成立の後、2018年3月に現在の役に着任した佐藤さんは、同社が抱えていた課題の改善に向けてすぐに動き出したといいます。
「まず自分がテコ入れを始めたのが財務バランスの確認。半導体業界には構造的な景気変動サイクルがありますが、着任当時は好況のタイミング。請負企業として売り上げが伸びていてもいいタイミングでしたが、決算は赤字となっていました。また、人が定着せず流動的。さらには、人手不足によって一人当たりの残業時間が長く、生産効率は低いという状況でした。そんな中、第一に行うべきは、黒字の定着化だと判断しました」
支払い先の確認から、細かなコストの削減、そしてチャージレートの算出による単価の決め方の改革まで。事業承継から現在までの約6年の間に行なった収益構造の改革により、営業利益は約3倍となっているといいます。
「人手不足という課題に対しては、働きやすい環境づくりを目指して『ダイバーシティ経営』『健康経営』の手法を導入しました。『ダイバーシティ経営』は働くということに対する価値観を多様化しようという取り組み。もっとも分かりやすい例でいうと、出産・育児や介護のための時短勤務や時差出勤を可能にするフレックス制度の導入や、外国人の正式採用。『健康経営』は身体とメンタルの両方をケアできるセミナーや制度の導入をはじめています。会社も、ものづくりも、結局は人が行うもの。それぞれが持ち時間の中でベストを尽くしていけるように環境を整えるのが私の仕事だと考えています」
2023年度以降、DX認定事業者や健康経営優良法人2024(ブライト500)の認定、YAMANASHIワーキングスタイルアワードの受賞など、経営や会社運営にも注目が高まる同社。新設の「経営企画部」を中心に、経営の仕組みの改革に取り組んでいます。
「これまでは営業と事務、製造、品質管理の3部署の体制でした。新たに設けた経営企画部は、会社が良くなるためのことはなんでもやろうという部署。社員自身が取り組みを考え、率先して動いてくれています。また、近い将来には管理職にモチベーションのある女性の役員登用も予定しています」
現在、昭和町に2つの工場を持つ同社は、2025年春頃に新工場を竣工し、拠点移動を計画。新工場は敷地面積が広くなるだけでなく、冷暖房完備。また、工場内の自動化を進め、さらなる生産性の向上を目指していくそう。
「成長し続けるためには手狭になってきたことを感じ、新工場の建立に向けて動き出しました。これまで通り小径の精密部品をつくることにこだわりながらも、今後は製造できるものを増やしていきたい。そうすることで、今ある延長線以外の分野など、参入できる領域を広げていきたいですね」
やりたいことを見つけられず、高校卒業後にきっかけづくりの気持ちでポリテクセンターに入所して、産業技術科で学びました。昭栄精機を知ったのは企業実習。技術の仕事に興味があったので、先輩たちが機械を使いながらも自分の手を動かして作業をしているのを見て惹かれました。最初は苦労もありましたが、ラインの作業ではなく色々な種類の仕事にチャレンジできることが楽しいです。入社して7年になりますが、近年は会社の変化が大きく、どんどん「会社っぽく」なっていくのを感じます。スタッフ皆が働きやすい環境に変化していくのなら、歓迎すべきことだと思います。
前職は飲食業でした。手に職をつけたいと思い、技術を習うためにポリテクセンターに入所。企業実習で昭栄精機を知りました。現在は主に自動小型旋盤を担当し、小径の精密部品をつくっています。日々、製作する図面が変わるので仕事に飽きることがないうえ、作業も自分で組み立ててやりたいように進めていけるので働きやすく感じています。また、工場には機械制御のない、手作業で仕上げるマシンもあります。〝技〟のいる作業を任されると、やはりやりがいを感じます。