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未来への投資と持続可能な消費社会へ

はじめてのエシカルの本の写真

はじめてのエシカル

人、自然、未来にやさしい暮らしかた

著者:末吉里花
株式会社 山川出版社
定価:本体1,400円(税別)

 エシカルとは倫理的な、道徳的なという意味で、堅苦しいイメージを持つ方が多いかもしれません。ただ、私たちの消費行動は、地球資源、環境、製品や商品に関わる人々へ何らかの影響を与えながら成立しています。目の前の商品やサービスの対価をお金で精算するだけではなく、その背景にある様々なことに想像力を働かせるだけでもエシカル消費の第一歩になることをこの著作は教えくれます。
 著者は、テレビ番組「世界ふしぎ発見」のミステリーハンターとして世界の秘境を訪ねる仕事で、キリマンジャロの山頂に立った時に、気候変動の影響で氷河がほとんど消滅していた現実に衝撃を受けてエシカルに目覚めました。気候変動には諸説あり、温室効果ガスや資源の過剰消費が原因だと科学的に完全に立証されたわけではありませんが、人類が化石燃料を燃やし始めてからの短期間に環境が激変したことは事実です。また、コーヒー、コットン、チョコレート、レアアースなどの原料の採取労働において、女性や子供たちが搾取されていることを知っている方は数多くいます。フェアトレードがそのような悲惨な労働をなくす上で重要なこともすでに知っています。身近なところで、できることから取り組む小さなライフスタイルの変更が、大きな変化につながると著者は説いています。少しでも安く、自分だけ得をするような消費行動には、その裏に、必ず理由があることを考えることから始めてみてはいかがでしょうか。
 南米の先住民に伝わる話に「ハチドリのひとしずくーいま、私にできることー」があります。森の大火事を前にハチドリが水のしずくを一滴ずつ運んで火にかける行為を、他の動物が無駄だと笑う話です。ハチドリは自分に今できることをしているだけと答えます。この小さな行いが、大きなうねりとなり、事態を動かすことに繋がるという先住民の知恵です。今、私たちも自分にできることを積み重ねることで、持続可能な社会を未来へ引き継ぐことができるのではないでしょうか。