Make You Happy 未来を見据えた新工場

地域企業が未来へ繋がっていくために

 県内で、新社屋・新工場の建設をする製造企業が増えています。時代の変化に対応した生産工程の変化や、市場からの要請への対応などに必要な設備投資なのでしょうが、以前のそれとは動機や目的が微妙に変化していることに気づきます。未来の環境への投資、次世代人材確保と育成のための投資、未来のDX社会への投資など、増産・増益など事業規模拡大だけを目的としたものとは違ってきています。今回、新社屋や新工場建設に取り組んだ4社の設備投資の内容に迫ります。

ライトアップされた新工場の写真

ライトアップされた新工場

株式会社菊島のロゴ
お客様の要望に品質と対応力で応える
働きやすい環境を整え、さらなる躍進を。

 2023年4月、敷地内に新設された新工場「K棟」が稼働をスタートした。新たに動き出した工場は、生産拡大によってものが溢れた工場内の整理や作業の効率性のみを目的としたものではなく、従業員の働く環境をも考慮した設計となっている。「可能性への投資」と菊島社長が語る新工場設立の背景と今、そして今後の事業展開を紹介する。

社会情勢を読み、次の手を打つ
菊島の歩みと工場の拡大

 「祖父が家内職的に事業を始めたのが1970年。その数年後に父が株式を設立し、『株式会社菊島』としての歩みが始まりました。弊社の主力はワイヤーハーネス。近年は社会の変化に伴い需要が大幅に伸びている分野でもあります」
 こう聞かせてくれるのは、株式会社菊島・代表取締役社長の菊島久さん。同社は2023年4月に新工場・K棟を完成させ、稼働をスタート。「今できる最大規模の施設を設立した」と菊島社長が語る新工場は、一階800㎡、二階300㎡という広さを誇ります。今回の新工場設立によって、これまで課題としていた通路の狭さや備蓄状況の改善はもちろん、作業効率を高めるためのレイアウトの工夫で生産性もアップ。部材の入荷から製造、組立まで、一連の作業を担う同社では、ものづくりがより滞りなく実現できる環境が整ったといいます。
 「私たちの会社は戦後しばらくして祖父が起こした呉服屋からスタート。その後、経営が傾くと祖父は鯉の養殖も行ったそうです。現在の製造業を始めるきっかけは、高度経済成長期。県内に大企業が工場を構えるようになった頃、そのお手伝いから始まったと聞いています。これまでにも新たな仕事が増えるたび、弊社は計6回の工場増築を繰り返してきましたが、今回の新工場設立は、将来、より仕事の幅を広げていくための投資という側面が強くあります。こちらの準備体制が整っていることで、仕事を依頼しやすくなる企業も多くなる。『やってほしい』とお声がけいただいた際に、迅速に対応できる環境づくりを考えました。加えて、これまで既存の棟にあった本社機能もK棟に移転。菊島のものづくりを説明するための営業ツールとしても活用していきたいと思っています」と菊島社長は語ります。

株式会社菊島社員の写真
「できることを増やすこと」で、
安定した企業成長を目指す

 新工場設立に伴い、組立業務も規模が拡大(出荷台数ベースで約1.8倍に)。同社は好調の傍ら、事業の次なるステップを考え始めているといいます。
 「今はワイヤーハーネスの製造や組立を主軸としていますが、今後は設計にも関与できるようになることや、装置を最終形態まで組み立てて、総合検査まで実施できるようにと考えています。まったくの別形態というよりは、今ある仕事の奥行きを広げることを考えていきたい。たとえば取引先にX線回析装置を扱う企業様がいれば、X線作業主任者の資格取得サポートを従業員に対して当社で行い、社内で製造物のチェックまで完遂することができるようにする。取引先企業様のニーズに応えながら、長く安定成長する企業になれるようにと考えています」
 できることを増やしていくためには、人材の確保と育成も不可欠。同社ではスキルマップのさらなる具体化を行うなど、ものづくりに対する教育の見直しも行うほか、〝コミュニケーションスキルの向上〟にも注力。
 「私たちの仕事は製品との向かい合いでありつつ、チームの連携が大切。円滑なコミュニケーションが取れないと全体がギクシャクし、いい雰囲気の中で仕事を行うことができません。装置一台作り上げるというのは、一人でどうこうできるものではありませんから。そこで、外部講師の方を招いての研修を取り入れつつ、常日頃からチームでのコミュニケーションを密にすることを心がける。従業員同士の信頼関係の構築を大切にしています」
 今回設立した新工場には、約90名の社員を一堂に収容できる食堂を完備。社員のくつろぎの場であることはもちろん、研修に使ったり、全従業員での朝礼を実施したりと、コミュニケーションの場としても機能させているようです。
 「設備の拡張とともに、人材確保も今後の課題。ポリテクセンターの訓練生の企業実習をお受けし、その後、採用に繋がった事例もあるので、この採用方法も重要な選択肢として今後も引き続き取り組んでいきたい。うちで働くことで、従業員の幸福度が上がるように」と菊島社長。将来を見据えたハードとソフトの環境づくりは、安定した企業成長のための新たな一歩となるのでしょう。

組立てエリアの写真

組立てエリア

細かく管理され、導線を考えられた工場の写真

細かく管理され、
導線を考えられた工場

チームで積極的にコミュニケーションを取る社員の写真

チームで積極的に
コミュニケーション

リラックスできる和室もある食堂の写真1 リラックスできる和室もある食堂の写真2

リラックスできる和室もある食堂

株式会社菊島
代表取締役社長

菊島 久さん

菊島久さんの写真

成長し続ける企業を目指し
地域で頑張り続けること

 株式会社菊島は昭和57年の株式設立よりも以前から、韮崎市のこの地で社会のニーズに合わせた事業を営んでまいりました。現在私たちが主力としているのは、ワイヤーハーネスの製造。他の製造業と同じようにコロナ禍の波はありましたが、その後V字回復を遂げ、現在は社会の変化に伴い需要が大きく伸びています。今回の新工場設立も設備需要の高まりが大きなきっかけでした。
 当社の特徴は、企業規模でいえば大きくなくとも、長くお客様とお取引させていただくことができること。それは、品質に対する安心と弊社への信頼が付加価値として製品に付随できているからだと考えています。目指すのは、長く安定した企業成長。新工場はそれを実現する未来への投資として、生産効率性のみならず、従業員の働きやすさとレベルアップできる環境づくりを考えています。社員セミナーや勉強会を行い、学びあえる環境づくりにも力を入れています。
 決して企業数が多くはない山梨県ですが、私たちがこの地で輝き続けることで、未来を担う人材に「面白そうな企業がある」「頑張っているところがある」ということを伝えたい。そうすることで、人口減少が叫ばれる山梨県の人口流出を少しでも食い止め、県内にも就職先がきちんとあることを示したいと考えています。

株式会社菊島の写真

株式会社 菊島

所在地:山梨県韮崎市中田町小田川中道191
   TEL.0551-25-5503
事業内容:ケーブル加工・接続コードの組立

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