今号の「つながるポリテク」では、次世代に事業を承継すること、社員が継続して働き甲斐を感じてもらえることを目的として、新工場、新社屋、職場環境のリニューアルに取り組んだ地域企業を紹介いたしました。当たり前ですが、生産活動、サービス提供活動は、市場があってのものであり、その消費市場がこれまでの「大量生産・大量消費」を前提としたままでは持続可能な社会は実現できません。どのような消費マインドが今後必要なのか、古の教え、またエシカルという新しい考え方を踏まえて考察します。
枯山水の石庭で有名な龍安寺。方丈回廊の南側が石庭で、北側に回り込んだところにある庭に苔むした手水鉢、〝知足の蹲踞〟がひっそりと置いてあることをご存じでしょうか。徳川光圀公が寄進したと伝承されるもので、公開されているのはレプリカですが、本物は奥の茶室に保管されており、希望者は予約をすれば有料で見ることもできます。
水だまりになるところが〝口〟その四方を〝五〟〝隹〟〝疋〟〝矢〟が囲み、「吾唯足ることを知る」という禅の格言になっています。「足ることを知る者は、貧しいと言えども富めり、足ることを知らぬ物は富めりと言えども貧し」という意味です。
環境破壊、地球資源の浪費、気候変動などは、人間の飽くなき欲望が生み出す消費行動が要因の一つであることは疑いのない事実です。市場原理主義は、言い換えれば欲望原理主義なのかも知れません。「もっと欲しい、もっと便利に、もっとたくさん・・・」といった際限のない膨大な欲望が、生態系に悪影響を与えます。健全な消費は、市場の活性化になくてはならない行動ですが、資力に任せて自分の欲望を満たすためだけの消費は、今後持続可能な社会を実現する阻害要因になりかねません。フェア・トレードやエシカル消費といった、商品・製品・サービスに関わる考え方・行動が出てきた背景には、行き過ぎた一方的な消費に対する警鐘があるのだと思います。
企業経営も、これまでとは違う価値観を必要とされている一方、消費者、市場も倫理観に裏付けされた消費行動が必要な時代に入ったことを一人ひとりが考え、今の社会を未来に繋げていくために行動する時期だと思います。まさに今こそ、「足ることを知る」という謙虚な気持ちが必要ではないでしょうか。