体系的に学ぶ工学理論と、ものづくりの実践を並行すること
少子高齢化が加速する日本の人口構成において、次世代人材とよばれる若年層はこの先ますます減少していくことが予測されています。企業にとって新卒者の採用は厳しい状況となり、代替えとなる新たな人材確保の手段を確立していくことは産業界全体の課題となっています。そんな中、企業と学校が連携して次世代人材を育てるという試みを紹介します。学校教育に部活動を通して産業界が参画し、実践的なスキルを身につけてもらうという取り組みです。今回ご紹介するのは、自動車業界の取り組み例。公益社団法人「自動車技術会」が主催する学生フォーミュラ大会を通して、実践的なモノづくりを体験する場となっています。
2022年9月に開催予定の「全日本学生フォーミュラ大会」に向けて、ICVクラス(ガソリンエンジン車)の車両製作を行っているのは、工業分野のエンジニアとして将来自動車業界への就職を目指す学生で結成された「山梨大学 学生フォーミュラ部」。最近の社会的なガソリン車から電気自動車へのシフト傾向の影響を受け、同大会でもガソリンエンジン部門からEV部門へ出場校がシフト傾向。「山梨大学 学生フォーミュラ部」においても、ガソリンエンジン部門での参加は今回が最後となる予定だそうです。
山梨大学 学生フォーミュラ部 部員 15名。
部員の多くは工学部機械工学系に所属。部活動を通して、
講義で習得しなければならない科目を実践でも習得。
自動車業界への就職率は圧倒的に高く、
新卒ながら即戦力に近い人材を輩出している。
1年生から4年生がチームになって、
その年の車を作り上げ、大会へ出場。
その活動の中で先輩から後輩へノウハウの伝承が行われ、
チームで助け合うことの大切さを経験。
大会に向けての活動は、スポンサー探しにはじまり、資金や部品の調達、設計・開発・製作までを自分たちで実践。試走と改良を繰り返し、一台の車をゼロから作り上げていきます。審査項目は「静的審査(デザイン・コスト等)」と「動的審査(加速性能・耐久性・燃費等)」の2つのカテゴリーの総合評価で順位を決定。この大会に参加することで、自動車業界で新しい車を開発・製造していくプロセスのすべてを体験することができる仕組みとなっています。
「大学では工学理論を体系的に学ぶことはできますが、実際にモノづくりをする時間はそれほど多くありません。このフォーミュラ部の活動は、理論をどう実践すれば良いのかを学ぶ機会となっています」と自動車業界への就職を目指す車好きな学生たち。大学で学ぶ工学理論の実践機会としてうってつけの場であると同大会を捉えています。
このように、教育の場に産業界がほんの少し介入することで、勉学と実践をリンクさせる環境を作ることは可能です。人材確保の厳しさが叫ばれる昨今、学校教育の段階から業界全体で関わり、時間と手間をかけて次世代人材を育てていくことは、これからのモノづくり業界に必要な取り組みの一つではないでしょうか。社会全体で未来の人材を育てようとする姿勢こそ、今の時代に求められていることなのだと感じます。
※ポリテクセンター山梨は、同部の溶接分野の技術支援を予定しています
〝ガンバレ〟山梨大学 学生フォーミュラ部!!
※ポリテクセンター山梨の求職者向け訓練コース
●機械設計エンジニア科●IoT機器プロダクト科の2コースは
企業と連携して(企業実習18日間)、
専門知識技術を学ぶ訓練プログラムです。