SDGsとは2015年に国連サミットで採択された“Sustainable Development Goals”のこと。世の中で起きている環境問題、貧困や飢餓、社会的格差や気候変動など、さまざまな問題を背景に、強い危機感の中から誕生しました。昨今特に環境破壊や異常気象、新たなウイルスの脅威などの自然現象により、人間社会が大きな影響を受けています。世界共通目標として掲げられた17のゴールは、2030年までに達成を目指そうとするものです。
以降、日本でも多くの企業や行政・公共機関などが「SDGs」を企業・組織ポリシーとして全面に掲げるなど、一斉に社会が動き出しています。ただ、「SDGs」を掲げることで、採用面、取引面、社会評価などの様々な面において、未来への展望をもつ組織として好印象を生むことも期待して取り組んでいるケースも見受けられますが、経営・運営のトップ、組織に属する方々が「SDGs」を理解し、自分たちにできることから少しずつ取り組み、人間の経済活動が生態系や世界中の人々へ与える悪影響を最小化することに努め、次の世代に持続可能な世界を引き継いでいくことは尊いことであることは確かです。「SDGs」の17の共通目標の内容は、経済、社会、環境という3つの側面を総合的に捉えたもの。世界をつなぐ大きな目標であることは間違いありません。
ここで皆様にも深く考えていただきたいのは、これまでの利益、物質的豊かさや快適さ、便利さを追求することが根源にあったビジネスのフェーズから「SDGs」の取り組みは対照的な位置にあるということ。これまでと真逆の思考と行動が必要になっていくということです。
例えば、カーボンニュートラルを考えてみてください。自動車業界のガソリン自動車から電気自動車(EV)へのシフトは加速度的に進んでいますが、充電用電気を100%再生可能エネルギーで賄うには、程遠い現状があります。また、エコバッグを常に携帯する人も増え、大きなプラスチックバッグの使用は減っていますが、エコバッグの中はプラスチック包装満載。膨大なプラスチックゴミを排出している現実が多分にあります。完全なエコを実現するには、手間とコストがかかるということを察していただけると思います。「SDGs」は国連加盟国すべてが合意している目標です。その実現のための取り組みは行政や企業が自由な発想で取り組むことができるもの。どういったプロジェクトを展開し、どのように人々に伝えていくのか。その動きや伝え方がとても重要になるのです。
企業活動を維持していくためには、利益を確保することは必要条件。それと並行して活動を展開する「SDGs」への取り組みは、理想とする目標の清廉さに酔うことなく、減収も受け入れること、そして個々人においては便利さも手放し面倒さを受け入れること、快適さもある程度失うこと、そして物質的豊かさから解放されることをきちんと考え、覚悟を持って「SDGs」に対峙すべきと考えています。
世界は産業革命を契機に利益至上主義となり、わずか200年あまりで持続不可能な世界へと変わりました。世界各地には、消滅、または希少となってしまった持続可能な生活様式や職人的ものづくりが確かに存在してきました。それらのものづくりや生活様式は、地球の生態系と折り合いをつけながら、何百年、何千年と脈々と続いてきた歴史あるものです。それらの「持続可能」な活動や社会は、人間一人ひとりの飽くなき欲望により様変わりしてしまったといえます。
世界の約80億人の人類全員が、持続可能な世界を目指すことは難しいことだと思います。不条理なことがあっても、自分だけ我慢するのは不公平だと思うのか、自らが「持続可能な社会」のために言動をブレさせずにいられるのか、私たちは今、覚悟を問われているのではないでしょうか。
近年では、「SDGs」を社員教育のテーマに取り上げるケースも増えてきました。企業として、会社の利益を捨てても優先すべきことがあることを実感し、一人でも多くの人に認識・協力してもらえるようにプロジェクトを推進することこそ、次のアクションにつながるのだと思います。
個々人においては、目の前にある自分の生活を見直してみることから。毎日の食事でフードロスを減らすことも、働き方や働くことについての考え方を変えることも取り組みの一つになります。
2030年、社会はどうなっているかを想像してみてください。自分にできる「SDGs」は何か、そう考えてみることもまた、アクションの一つです。