現在、日本の産業界では、情報人材の育成が急務といわれています。 特に、製造業における情報人材の必要性とその背景について解説します。
デジタルテクノロジーを背景に、業務プロセスを刷新することはどの業界でも実現可能な時代となりました。
DX社会への対応が優先課題であると、マスコミなどで、連日報道されています。事実、IT化の影響は、山梨県の製造業にも。そこで、ポリテクセンター山梨では、令和2〜3年度に「機械・金属加工製造業におけるIT人材育成」をテーマにした人材育成研究会を実施。今後の人材育成ビジョンと、IoT化推進のための教育プログラムの試行検証に取り組みました。その取り組み結果の一部と、検証から見えてきた製造業の人材育成の課題について、考察します。
上の円グラフで示したものは、ヒアリング調査の結果の一部。グラフから分かる通り、DX社会への対応への危機感は、想像以上に高いことがわかりました。また、日本の製造業界は、現状は十分仕事が継続できている状況にもかかわらず、未来に対して危機感を抱えていることを読み取ることができます。背景にあるのは、海外企業の動向や社会全体のDX化、そしてネットワーク社会における消費行動の変化により、ITスキル活用の必要性が大きくなったことなどから危機感が大きくなってきているのだと思います。
今回の調査で感じたことは、多くの経営者の中でIT化対策そのものがゴールとなってしまっているのではないかということ。コストの削減、競争力の強化、社会の傾向への迎合などによりIT化を考えている企業が多くありました。DX社会で考えなければならないことは、産業活動のインフラが大きく変革する中、IT化の先のビジョンです。ITスキルを日常的に活用している海外の企業群は、パラダイムシフトを目指し、一歩先を歩んでいます。日本の製造業もそのステージで競い合える企業になるためには、IT環境をフル活用できる社会環境の実現が急がれるのではないでしょうか。
日本は世界の中でもDX化対応が遅れているといわれています。これを、これまでの日本産業界の特性と併せて考えてみると、次の特性が挙げられます。
●情報技術を持つ人材が情報産業に集中していることにより、情報産業界 以外でIT人材が育たなかった
●ネットワーク社会以前の産業界で、日本の経済活動が大きな成功体験を もったことにより、デジタル・ネットワーク下での対応が遅れた
DX化とは、IT化社会を意味するのではなく、デジタルテクノロジーを背景にした変化・変形です。デジタルテクノロジーを背景にした変化は短時間で進展し、一夜でグローバルスタンダードが変わってしまう恐れを孕みます。その変化に対応し、パラダイムシフトを実現する側にいるために、ビジョンを持ったDX化・IT化戦略や人材育成に取り組む必要があるのではないでしょうか。
※ポリテクセンター山梨では
DX化社会対応のための人材育成事業を
展開しています