tete創刊号に掲載の「企業・学校が連携して次世代人材を育てる」で取り上げた山梨大学学生フォーミュラ部(YFR)のその後を追いました。全日本学生フォーミュラ大会の目的や運営組織など概略については、創刊号で触れていますので興味のある方はスマホ版バックナンバーをご覧ください。
大学等で工学を学ぶ学生達が、その専門技術・知識をこのフォーミュラ大会で実践し、小型フォーミュラカー開発を通して業界を勉強し、即戦力に近い新卒として自動車業界で活躍しています。人材育成やリクルートを目的として、企業自らが資金を提供し、汗もかくこの仕掛けが、変革を迎える自動車業界への人材供給の重要な役割を果たしています。次世代人材が益々先細りする日本の労働市場において、教育は学校や家庭の責任として傍観し、リクルート活動だけで良い人材を採用できる時代は終わり、ある意味、学校教育にも企業が関わる時代だと言えるのではないでしょうか。
創刊号の取材を通して、YFRとお付き合いが始まったポリテクセンター山梨に、長年YFRのスポンサーをしている企業から、「本業が多忙でフォーミュラ部の技術的サポートが難しくなったので、面倒をみてもらえないだろうか?」と言う相談がありました。2023年全国大会に向けてEV部門エントリー用の車両製作に入っていたYFRから必要な技術支援要望をヒアリングし、金銭的支援以外で十分サポートできると判断し、約1か月間、フレーム製作の作業場の提供と溶接技術への支援を行いました。
併せて、地元大学のこのような活動を地域の中小企業が知らない現実もあり、チームメンバーと一緒に活動内容のプレゼンテーションも行い、新たにスポンサーになっていただいた企業も出てきました。地域の中小企業と地元大学が、学生フォーミュラの活動を通じて、交流が芽生えることも地域産業界にとって重要なことであり、そのつながりの場にポリテクセンターがなれたことを光栄に思います。
2023年8月28日〜9月2日に静岡県袋井市の運動公園エコパで実施された学生フォーミュラ日本大会の白熱した競技の模様を誌上でお伝えします。今大会から、YFRはEV部門への初チャレンジということもあり、車の作り込み時点でもかなり苦戦していました。これまでの経験値を使えない技術分野もあり手探りでの車両製作が続き、ギリギリのタイミングで技術審査をクリアし、大会会場での車検にコマを進めました。ここで、経験値の蓄積がないことがチームを苦しめます。車両の構造的な車検は通りましたが、EV車検と言われるEV部門独自の車検に進めない中、時間切れで車検をクリアできず、競技終了となりました。チームメンバーは、最後まで必死に整備に取り組みましたが、残念な結果となりました。それでも、翌日、あきらめずフォローアップ車検を通過し、本コースでの走行は果たしました。コース半ばでリタイヤとなりましたが、本コースでの走行データは、来年度への貴重な経験値となったと思います。
競技を終えて、チームメンバーは、EV部門への初参戦は、思ったよりハードルが高かったこと、コロナ禍による数年間の活動分断が車両づくりに大きなマイナスであったことなどが苦戦の要因であったことを話してくれました。しかし、最後まであきらめることなく奮戦したチームメンバーには心から敬意を表します。YFRの伝統が次のチームに引き継がれていくことを信じて疑いません。
どの大学チームも、車作りに夢中になっている姿はすがすがしく、その真剣さに本当に感動させられました。大学等と企業が連携し、学生が成長できる場を用意しサポートすることで、学生自らが成長する姿を見て、教育環境と当人のモチベーションが合致して初めて、想定以上の人材育成を実現できることが、再度確認することができた大会でした。
フォローアップ走行にて半周まで走りリタイヤとなりました。最後のエコパでコースを走れた事、とても誇りに思います。応援していただいたスポンサー様方、誠に有難うございました。今後とも弊チームへのご支援の程宜しくお願いいたします。
ドライバー佐々木