ギヨーム・ピトロン Guillaum Pitron 著
児玉 しおり 訳
(株)原書房 発行
2,200円(税別)
今号では、デジタル・テクノロジーを背景にしたDX社会における製造業の今後について、企業の取組みや、IT化を促進するベンダー企業などにフォーカスして取材してきました。時代は、新しい経済社会へ加速度的に進んでいます。一方、持続可能な開発を目指すSDGsに象徴されるように、次世代への責務として現世代は、様々な課題に立ち向かわなければなりません。これまでの歴史を振り返れば、変革が幾度となく繰り返され、その推進力にみんなが同調し、追随する形で社会が変容してきました。そして、後からその変革の負の部分が表面化し、大きな問題・禍根を残してきました。デジタル・テクノロジーも全能ではありません。健全なる疑問も必要です。今回ご紹介する著書は、デジタル社会の影の部分にスポットをあて、ネットの進化と持続可能な社会との関係を考えさせてくれる作品です。
デジタル・テクノロジーとエコロジーの関係は空想に過ぎず、何十億人もの人が「いいね!」を送ることで、膨大な電力を消費しているインターネットの環境負荷には、誰も気を留めません。また、デジタル機器で使用されるレアアースの争奪戦、採掘現場の汚染や劣悪な労働環境などを、スマートにデジタル機器を使って便利さを享受しているユーザで、想いを馳せている人がどれほどいるのでしょうか。デジタル・テクノロジーは、社会を間違いなくより速く、より便利にしていくでしょう。ただ、そこには必ず影の部分があることを常に考えながら、一方的な進化を正解としない健全なる疑問の重要性を再認識させてくれます。