Make You Happy 革新する時代に対応するために
株式会社富士製作所の写真 株式会社富士製作所の社内写真1
株式会社富士製作所のロゴ

DX時代に備え、IT人材育成に取り組む
(山梨県産業技術センターとポリテクセンター山梨の連携活用事例)

 山梨県機械金属工業団地内にある、現在新工場建設中の富士製作所にお邪魔しました。自動車のマスターシリンダー、キャリパーなどのブレーキ部品やサスペンションで使用する部品の製造を行っている会社です。自動車業界は、EVへのシフト、FCV、水素エンジン、自動運転、空中移動ビーグルなど、今後、革新が次々と起こる分野です。同社は、主力製品がガソリンエンジン関連部品ではないため、短期的には、これから起きる業界再編の影響は大きくないかも知れませんが、生産性向上、トレーサビリティの徹底など、デジタルネットワークのもとでのIoT化により、次の時代に対応するための業務改善に、積極的に取り組まれている企業です。

自らIT分野の学習に取り組んでいる
三枝 進専務取締役にお話を伺いました

 自動車部品は、直接的に人命に影響するので、精度、強度とも少しの間違いも許されません。メーカーのリコールがあれば、その部位に関係する全ての部品について、追跡調査が行われ、弊社でもトレーサビリティの報告を要求されることがあります。材料調達から納品までの履歴書類は膨大で、該当箇所を特定するための労力と時間は半端ではないので、まずは、このプロセスをデジタル管理に移行し、短時間で関係データを特定できる仕組みづくりに取り組んでいます。
 また、自動車業界の今後は劇的に変化していくことが間違いないので、今は、仕事が順調でも、この先市場がどう変わっていくのかを見定めることが経営者として非常に重要な責務だと思っています。そのためには、今の生産工程に〝ムリ・ムダ・ムラ〟がないか、IoT化による工程管理をさらに充実させ、自動化できる作業にはロボットなどの導入も積極的に取り組みたいと考えています。ただ、弊社がこれまで蓄積してきた経験から得られる〝カン・コツ〟を含む加工技術は、高品質の裏付けでもあるので、IoT化を進める中で自社の個性として活かしていきたいとも思います。
 IoTを進めるにあたって、自社内のIT適性が高い社員を中心に、自分も加わって積極的にデジタル技術について学習しています。学習効果として、工作機械用コンプレッサーの予防保全システムを自製する取り組みや、クラウドサーバーを活用して生産工程をモニタリングできる仕組みの導入にも取り組んでいます。まだまだ継続して学習しなければなりませんが、自社の製造の特性を知っている者が、IoT化を自ら進めることが重要だと考えています。現状をアナログ管理からデジタル管理運営に切り替えることで、今後起きる市場変化にいち早く対応できる企業力が備わると考えていて、その手段としてIoT化に取り組んでいます。
 現在、建設中の新工場では、IT環境も重視してますが、徹底したバリアフリー化も進め、障がい者雇用にも積極的に取り組みたいし、人にやさしい工場になることを目指しています。食事場所や休憩スペースなど福利厚生施設も充実させ、職場環境改善に力を入れました。

株式会社富士製作所の社屋の写真2

株式会社 富士製作所

所 在 地: 甲府市落合町817番地
事業内容: 油圧・電気制御部品の切削加工
[ブレーキ・サスペンション向けがメイン]
従業員数: 84名

株式会社富士製作所の社屋の写真3 株式会社富士製作所 三枝 進専務 株式会社富士製作所の社屋の写真4
株式会社富士製作所の社屋の写真5
株式会社富士製作所の社屋の写真6

新工場竣工までの仮レイアウトによる工場内。
限られたスペースを工夫し、
生産量、品質を落とさぬよう業務に取り組んでいる様子。

新工場竣工の際は、当teteにて、改めてご紹介します。

IoT化を継続していくための学習方法は?

ポリテク山梨活用事例

 富士製作所は、ポリテク山梨の離職者訓練修了生も採用いただき現在も活躍中です。また、専務をはじめIoT化担当の社員が、ポリテク山梨が実施している在職者向け訓練「能力開発セミナー」のIT関連コースを複数受講され、センシング、クラウドサーバー活用、アナログデータのデジタル化、協働ロボット導入などの学習に取り組みました。学習後、実践に移行する際に専門知識や技術的な壁にぶつかり、IoT化が思うように進まなかったり、頓挫してしまうケースも間々ある中で、富士製作所が、IoT化を実践していくために、その後どう学習して継続しているかを、産業技術センターの取り組みも含めて紹介します。

山梨県産業技術センターの取り組み

 IoT技術の導入時の設備投資費用負担や社内の技術者不足により、生産設備のIoT化に躊躇する中小企業が多い県内事情に対応するため、産業技術センターがマイコンを活用したIoTシステム(yisPIP)を開発しました。同時期に、ポリテクセンター山梨では、「機械・金属加工製造業におけるIT人材育成研究会」を実施しており、中小製造業の社内人材のIT活用力向上について協議していました。目的は、多額の設備投資なしに、時代の潮流に合わせたIoT化を進めるためのシステム導入とIT活用人材の育成という観点で一致し、技術支援と教育訓練について、協力連携することとなりました。
 産業技術センターが実施する技術講習会参加者がポリテクセンターの実施するIT訓練コースを受講し、理解を深めるというスキームです。また、その教育訓練プログラムに参加した受講者の中から、希望者についてはyisPIPコミュニティに参加し、実践面での課題や問題を議論し解決策を探る、産業技術センターの技術的なアドバイスを受けるなどに継続して取り組んでいます。重要なことは、学習のモチベーションが高いか、取り組むべきミッションが明確か、実践していく上でのフォローアップ背景があるかで、産業技術センターとポリテクセンターの支援体制は、その環境の一つと言えるかもしれません。
 富士製作所は、この仕組みを活用され継続的にIoT化に取り組んでいます。

yisPIPの図

【yisPIPとは】

 yisPIP(イスピプ)とは、Yamanashi IoT Solution for Productivity Improvement using PLCの略称で、高額な費用をかけずに、既存のPLCと連携することでセンシングや監視などができる産業技術センターが開発したIoTシステムです。

【DX実証フィールド】

 令和4年3月に竣工した「イノベーション支援棟」内に整備された設備で、工作機械4台とエアーコンプレッサの稼働状況を可視化するシステムを見ることができます。生産工程のデータ取得と可視化は、IoTを導入する事例としては、最も取り組みやすいものかも知れません。実際に、どのように可視化できるのかモデルケースとして見ることができるようになっています。見学もできますので、産業技術センターにお問い合わせください。

山梨県産業技術センターの写真

山梨県産業技術センター 甲府技術支援センター

所在地: 甲府市大津町2094
TEL. 055-243-6111
事業内容: 技術相談・支援、研修会・講習会、工業試験、 受託研究など

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