衝撃的なタイトルですが、イギリスの大手人材コンサルティング会社「ヘイズ」のマネージング・ディレクターの〝マーク・ブラジ〟が、2018年のレポートで言っていた言葉です。日本人として、愉快な指摘ではありませんが、レポートを読んでみると、その指摘は正鵠を射ている内容も多く、2023年の今では、円安により外国人の高度人材が益々獲得しにくい状況になっており、むしろ悪化しているかも知れません。そのレポートから、日本労働市場の特性を振り返り、今後のDX社会における人材確保・人材育成の課題について考えます。
33の国と地域の政府統計などを分析し、企業が求めているスキルと求職者とのミスマッチを数値化した
ポートでは、日本が高度なスキルを持つ人材を確保するのが最も難しい国だと指摘されている。
時代が求める市場価値の変化への対応に
高度人材が必要
- ●組織・団体力から個の力重視へ
大量消費から選別消費、少品種大量生産→多品種少量生産→多品種大量生産(マスカスタマイズ)など市場構造が変わってきている傾向では、多様な個性や異種人材が必要で、変化に強い個のスキルが求められる。団体戦から個人戦への時代へ
- ●スピード重視
経営判断のスピードが重要な時代。権限の委譲など方針決定のメカニズムの整備が必要。
- ●常に新しいビジネスモデルを提案できるかが勝負
企業寿命の短命化が加速しており、社会の変容に合わせたビジネスモデルを創造できるかが鍵。GAF(M)AMやテスラですら曲がり角に。
- ●業種間障壁の崩壊
業界理論よりも多様なユーザーへの対応が優先し、これまでの単独業界では対応できないクロスファンクションなビジネス展開が必要。
- ●ITから離れた産業は存続が厳しい
デジタルテクノロジーはインフラ化しており、あらゆる業界・ビジネスにおいて、デジタル技術を活用できる人材抜きでは変化に対応できない。
- ●経済における国境のボーダーレス化
地政学上の影響は、速くかつ大きくなっている。経済、政治、災害全てがビジネスに影響を与える。危
管理、非常事態に対応できる人材が必要。
高度人材確保面で国際標準から見た
日本人材の弱点
- ●IT活用力が弱い
ITを総合的・複合的に活用できる能力が低い。ITを背景にしたプランニング、改善案などITを手段として活用するスキルのレベルが不足している。DX社会の必須人材。
- ●語学力不足
複数の言語に対応できる語学力を保有する人材が少ない。国内マーケットは縮小傾向であり、ビジネスはグローバル市場で展開しなければならない状況において語学力不足は致命的。
- ●コミュニケーション力
単なる挨拶・伝達能力ではなく、深い関係性・人脈を構築できるコミュニケーション能力不足。新たなビジネスモデル構築には不可欠な要素。
- ●一般教養範囲が狭く浅い
人材の面白み・深みを生み出す、経験で得た知見や文化・歴史・芸術・経済・時勢などの造詣が不足。人材の魅力を際立たせる要素として必要。
- ●応用力・複合力が不足
就労慣習の影響もあるが、様々な業種・職種・業界での経験、専門知識をベースにした複合的能力が不足している。
日本の労働市場特性から考えられる要因
- ●横並び賃金及び評価制度
年齢・職種等でカテゴライズされた硬直した報酬システム。天井を突き抜ける人材が出現しにくい。
- ●文化・言語・慣習などの多様性に対応できていない学校教育
多様な民族国家ではないことから、子どもの頃から多様性に触れ理解できる環境が不足。
- ●一部に残る長期安定雇用等終身型雇用
同じ会社での長い在職期間による経験値は、変化の激しい時代ではあまり有効性がない。
- ●個人よりも組織・団体が優先する風土
組織の都合・理屈は、時代の変化への対応において、阻害要因になりかねない。
- ●硬直した新卒一括採用
人材確保難の今後、硬直した横並び型の新卒一括採用は、時代に合わない。
- ●専門性を重視しない採用基準
出身校のブランドや偏差値、協調性、取り組み姿勢など、専門性とは無関係の項目での選考が、高等教育機関での専門スキルの習得内容を無駄にしている。
高度人材が確保しやすい
労働市場になるには
- ●評価と報酬の仕組みの抜本的な見直し
高度成長時代の常識からの小手先ではない変革の断行。
- ●学校教育の国際化と専門教育の見直し
専門教育が、実社会に活きる教育制度へ。
- ●随時採用システムへの見直し
正しいジョブ型雇用の導入など、新卒採用、中途採用の手法の改革。
今号のテーマであるDX社会に対応するためには、IT活用能力を十分備えたマルチタスク型高度人材が不可欠です。前述したように、国際的に見て高度人材と言われるカテゴリーで、日本の労働市場はほとんどプライオリティを持っていないと言っても過言ではありません。他国の高度人材に依存するか、社内人材の高度化を図るか、いずれにしても何らかの対応をしなければ、DX時代の企業存続は難しいのではないでしょうか。