共生社会を目指して 株式会社KEIPEの写真

 甲府駅からほど近い商業施設が林立する一角に、「KEIPE(株)」があります。働きづらさ、生きづらさを感じながら居場所を失った方々に、働く喜びや居心地の良いスペースをビジネスとして、かつ継続して提供できる事業展開を目指した民間企業です。代表の赤池侑馬さんは、大学卒業後、中学校の教員を経験し、既成の仕組みに馴染めず、社会と断絶をしてしまう子供たちを多く見ながら、何もできない自分の立場に疑問を持つようになりました。教員のままではできないことを目指すため学校を退職した後、いくつかの事業を手掛け、「地域から本当に喜んでもらえる、これまでの山梨県にない新しい場所を必ず創ろう!」と3人で創業したのが「KEIPE(株)」です。
 就労弱者、特に障がい者への就労支援は、行政や公的な機関が関係法令に基づく各種政策的支援事業、企業への法定雇用率の設定による雇用の促進などを軸に、障がいをお持ちの方やご家族が自立し社会生活を営めることを目指した制度設計になっています。法令や制度は当然必要ですが、最も大切なことは、その時代に生きる全ての方が、あるがままの現実を受け入れ、障がい者、高齢者、子育て中の方々、様々な環境の中で生きる方々を特別なものとはせず、また、支援を施すのでも、どちらが上でも下でもなく、肩の力を抜いて、当たり前に共に生きることが、共生社会の根幹ではないかと思います。「KEIPE(株)」は、創業から紆余曲折もありましたが、「障がいを特別なものにせず誰もがそこに居ていい社会にする」をビジョンに、今出来ることから社員の共感接点を大切に日々活動しています。甲府オフィスは明るく、活力に溢れた職場でした。「KEIPE(株)」は福祉サービス施設の障がい者就労継続支援施設A型事業所ですが、普通の職場と全く変わらない職場です。赤池さんや運営スタッフ一同が目指す考え方が、浸透してきているのを感じさせていただきました。

MARLU SOUP(マールスープ)

「KEIPE(株)」の社食から、
居場所がない方々への快適な場所の提供を目指して

 「MARLU SOUP」は、最初「KEIPE(株)」の社員向けに無料ランチを提供するところから始まりました。赤池侑馬代表のパートナーの赤池有花さんが実質運営するスープメニューを中心としたカフェで、「甲府の中心エリアで、地域社会と接点を持ちづらい子育て中の方々や、身体によい食事を選びたい方にとっての新たな選択肢となり、ふらっと寄れるコミュニティの場として機能していったらいいな」という思いで、2022年6月にオープンしました。
 赤池有花さんも、出産・子育ての中で、ご自分のアイデンティティを見失い精神的にきつい時期を経験され、「みんなが自分を肯定し、自分らしさを愛せる暮らしを」を目指したい理想として、食の重要性も踏まえ、安心できる居場所づくりとして街のスープ屋さんを運営しています。取材当日も、子供連れのお客さんで一杯でした。最近は、近所のご高齢の方々の利用も増え、「KEIPE(株)」のグループビジョンである「誰もがそこに居ていい社会にする」を体現している場所となりつつあります。

MARLU SOUP(マールスープ)の写真
KEIPE CHALLENGE

全ての社員をエンパワーメントし地域に新たな価値を創造し
持続可能な循環型社会の実現を目指す

 赤池代表に今後の夢やビジョンについてお聞きしました。自分達だけで出来ることには限界があるので、まず、誰でもどこでも当たり前のように参画できる社会実現のため、協創パートナーを増やしていきたいこと、行政や福祉サービスでなければ対応できていない問題領域について、持続可能なビジネスで解決できるような仕組みを作って行きたいと気負うことなく語っていらっしゃいました。このような事業体が草の根で広がって行けば、きれいごとではなく、誰もが活躍できる社会実現も夢ではないと、思える取材でした。
 政治的に構築する法令やパラダイムは、関係する人々と公的予算による執行対応に陥りがちですし、莫大な利益を生む企業経営では、このような社会的課題に取り組むビジネスは継続できません。市場活力を維持するには、競争原理も必要だとは思いますが、行き過ぎた弱肉強食市場は、格差を生むだけで、継続を目標としたソーシャルビジネスの存在が必ず必要だと考えます。これからのリーダーは、そのバランスをどこで取るかの知見が必要です。行政、行政関係機関、企業体、専門家、地域の人々全てが、多様性を認め合い、〝そこにいて当たり前〟だと言う新たな社会が真の共生社会だと思いますが、皆さんはどう思われますか。

赤池 侑馬さん・赤池 有花さんの写真

KEIPE株式会社 代表取締役
赤池 侑馬さん

MARLU SOUP
赤池 有花さん

大学卒業後千葉市で中学校教員となるが、現状に疑問を感じ退職後、WEB系事業の立ち上げ、海外での新規事業立ち上げなどの経験を経て、障がい者就労支援事業に参画したことから、2017年KEIPE(株)を創業。

KEIPE株式会社[MARLU SOUP]
□KEIPE甲府
山梨県甲府市丸の内1-15-2第5丸銀ビル2F
□KEIPE笛吹
山梨県笛吹市石和町駅前13-11金子ビル2F
□CLUM 甲府中央ラボ
山梨県甲府市中央2-9-20タカオカビル1F

[障がい者 就労継続支援A型事業所]について
障害者総合支援法に基づく仕組みで、障がいや難病のある方が、雇用契約を結んだ上で一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービスで、このサービスを提供している機関をA型事業所と言います。A型の他にも、就労継続支援B型、就労移行支援などのサービスがあります。

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