創業は昭和42年。半導体製造装置を中心とする超精密部品から、大型で特殊な金属加工部品まで幅広いモノづくりを担う中星工業。「半導体製造のための精密機械装置などの製造業が多く栄えているこの地域において後発」という同社ですが、特にここ10年の成長は著しく、売上は10年前と比較して約3倍。採用面においても文系・理系問わず県内外から働きたい人が集まっているといいます。
「教育体制が少しずつカタチになってきていることが功を奏していると思います。私たちの仕事は、教育次第で誰にでもできるようになりますから」と話すのは近藤宏和社長。社長は他県でマスメディアの仕事に携わったのち、家業である製造業を継いだという異色の経歴の持ち主。
同社の人材育成におけるポイントの一つは、「4ヶ月」という新人研修の長さ。また、社長自ら定期的な面談を行うというコミュニケーションスタイルも特徴的です。「工業系の出身者のみならず、文系出身者を採用させていただくことも多いのが中星工業。製造の現場を知ってもらい、適性を測っていくためにも研修には時間をかけています」と社長。加えて、製造業における必要不可欠な技術を学ぶ場としてポリテクセンター山梨の「オーダーメイドセミナー」を活用。機械設計製図の作成やプログラミング、旋盤を用いた加工、溶接技術などの実習により仕事で使える技術・技能を学んでいます。
「例えば、アルミの塊がとても複雑な形状に変化していく、その変化そのものがモノづくりの仕事。モノづくりの面白さは、製品に技術がそのまま反映されることにあると思います。モノはウソをつきませんので、自己成長とも向き合いやすい。だからこそ、社員の成長は大切にしたいと思います。何より、お客様のために、いい人に育ってほしいですね」
「半導体製造装置に使われている部品」などモノづくりで高い技術を誇る中星工業の社屋
研修中に行われる近藤社長と新入社員との面談
2022年の新入社員は文系、理系を問わず7名。
代表してお二人に話をうかがいました。
中星工業に惹かれたのは、説明会で会社の雰囲気が良さそうだと感じたから。機械を扱うことや製造業への不安は少しありましたが、どんなことをするかよりも、働く環境や周りの人というのがとても大きなポイントでした。実際に入社してみると、まずは研修が長くて驚きました。触れたことのない大きな機械ばかりで、日々吸収することばかり。とても大変でしたが、刺激的な時間でした。
面接や会社説明会の時に感じた職場環境の良さは思った通りで、救われています。現在は希望していた品質保証の部署で頑張っています。モノづくりの世界で、自分なりにできることを見つけ、人の役に立てるようになりたいと思います。
子どもの頃、プラモデルを作るのが大好きで、「組立」の仕事に惹かれました。文系出身なので、機械にも触ったことがありませんでしたし、プログラミングとも無縁。「やったことがない」ことに対する不安は少しありました。
実際入社してみると、周囲の人たちがとても丁寧に時間をかけて教えてくださり、研修や実習を通して少しずつできるようになることが増えるのを嬉しく思いました。何より、モノづくりの仕事は出来上がった時に楽しい気持ちを味わえるのがとてもいいですね。
まだまだ、学ぶことの多い立場ですが、これから配属される部署に直接関係ないことも含めて、製造業の技術を身につけていきたいです。
創業55年の中星工業は、この地では〝後発〟のモノづくり企業。人材確保における競争も激しく、文系しか採用できない状態が続いていたというのも一つの事実です。採用が好転するようになったのは、金属加工から溶接、組立と事業の幅を広げたことと、セミナーや教育機関を活用しながら「自分たちでできるようになろう」と独自の人材育成体制が確立できはじめた頃から。2年前には人事部を設立したほか、近年は会社説明会で新入社員が会社をプレゼンするなど、製造業が敬遠されない工夫をしています。
事業においては〝他の会社があまり手をつけなかった部分=取引先の企業が困っている部分〟を助けようと試行錯誤しながら技術を磨き、結果として事業を幅広く展開できるようになり、技術的な独自の知見に対する評価を得られるようになりました。金属の切削加工に加えて溶接加工まで行う会社は多くないと思います。
今後の当社の目標は、より働きやすい企業となっていくことです。売上を伸ばすことももちろん大切ですが、社員たちに「いい会社で働けた」「いい社長のもとで過ごせた」と思ってもらえるような企業になることですね。成長できる機会を提供し、より充実した社会生活を送ることのできる場づくりに注力していきたいと思います。