北杜市に工場を持つ瀧口製作所。同社は病院や調剤薬局で処方された薬を分包する「薬科機器」や、転落防止を目的に都心の駅などに設置する「ホームドア」の製造を柱に、暮らしを支える便利な機械をつくる企業です。薬科機器の需要が膨らむ前は、全国各地に設置される通信機器を全国唯一の拠点として製造していました。22〜23年前に薬を均一に散布するための機械の心臓部を同社で作り上げて提案したことをきっかけに、薬科機器の製造がスタート。大手医療機器メーカーからの依頼が途絶えない状況となりました。「プレス・板金・成型まで、少量多品種の板金工程に対応できる技術力と、東京本社に設計部隊をもち、設計から製造・組立、そしてメンテナンスなどのサービスまで自社で一貫して行える提案力と柔軟性。これがOEM・受注生産でのモノづくりをスタイルとする瀧口製作所の強みだと考えています」と工場長の永関聖さんは聞かせてくれます。
北杜市にある山梨工場は、板金加工やプラスチック部品の成型など、部品の製造拠点として稼働。「工程により忙しい時には最大24時間稼働することもありますが、ここ2年ほどは、誰でも同じクオリティになるようにマニュアルによる作業の標準化に取り組んできました。おかげで、『休みやすい』と社員たちから声があがるようになっています。社員満足度・幸福度をあげていくことは、社をあげて取り組んでいることの一つ。『楽しい職場・楽しい仲間・楽しい家族』という言葉を掲げ、より良い職場環境づくりに努めています」
自然豊かな場所に佇む瀧口製作所山梨工場
人間関係にストレスを感じて前職を辞めたあと、ポリテクセンター山梨には友人に誘われて入所。その時に「未経験でも大丈夫」と言っていただき、図面すら見たことがなかった自分に基礎から丁寧に教えていただいたことは製造業の仕事に就くきっかけになっています。当時はとにかく仕事がしたくて、技術を身につけて何かできるようになりたいと思っていました。板金プレスや組立を行う製造業は未知の分野でした。
瀧口製作所の仕事は難しいけれど、困ったことがあれば周囲の人が助けてくれる。コミュニケーションが取りやすく、質問しやすい環境に救われています。忙しい中でもみなさん余裕があるように見え、笑顔が多い中で働けていることをとても有難いことだと感じています。これからは資格にチャレンジしたい。資格を取ることで、任せてもらえる仕事も増えますから。また、作業スピードを上げることや、作業の正確さをあげていくことも自分の課題だと思っています。少しずつ、色々なことをできるようになりたいと思っています。
仕事の合間に溶接の技術も熱心に学ぶ二人。
前職は保育士。職業的にまだまだ男性である自分ができることが限られていたことや、金銭的なことに物足りなさを感じ、転職を考えるようになりました。モノづくりは元々興味のあった分野。趣味でレジンアクセサリーを制作していたり、5円玉を磨いたりすることも好きでした(笑)。とはいえ、保育士から製造業は大きなキャリアチェンジ。まったく別の世界への転職でしたので、いきなりでは不安があり、「ポリテクセンター山梨」に入所しました。実際に体験し、モノづくりに触れているうちに興味は増すばかり。ゼロから1を作り出し、1から10にしていく製造業の過程に興味を持ちました。
瀧口製作所に惹かれたのは、最初に気持ちのよい挨拶をしてくれたから。働いている人たちの顔もとても生き生きとしていて、こんな職場で働きたいと思いました。僕は今甲府から北杜市へ通っていますので、社内規定により高速代の支給があるのも魅力。まだまだ不慣れな部分も多いので、少しずつ自分の作業を正確にして、戦力として役立てるようになりたいと思います。
工場の仕事というと男性の仕事というイメージが強いかもしれませんが、瀧口製作所山梨工場では90名ほどのスタッフのうち、約4割が女性。さらに平均年齢は40歳以下と若い力が集まっています。加えて弊工場の女性は、アシスタント的な仕事をするというよりも、自分でライセンスを取得して大きな機械を動かしたり、大きな金属の溶接に携わったりしています。僕が工場長として心がけているのは「ムリがないように」ということ。「やってみたい仕事」をヒアリングすることや「この仕事を任せてみたいのだけど、どう?」と本人の意思や意向を確認することなど、必ずコミュニケーションを取りながら現場を動かしていくようにしています。せっかく一緒に働くのですから、皆で楽しく。もちろん、仕事だけでなく、プライベートも充実させてほしいと思っているからこそ、お休みも比較的自由にとってもらえるようにしています(僕、本当にすぐ判子押してしまうんです、笑)。
モチベーション管理としては、2年前から社内に評価制度が導入されています。「やるべきこと」をチーム内で可視化し、その到達度を互いに評価することで進むべき道を明確にできているというのかな。目標が明確なほど、個人のやりがいにもつながる。それを、働き手の満足度にも繋げていきたいと考えています。